Crazy Shrimp

Crazy Shrimp is not as crazy as it sounds, but sometimes lazily and sometimes intensively, collects, researches and observes not just Japanese freshwater shrimps and prawns, but also saltwater shrimps, fish and many other aquatic creatures.

テナガエビ Macrobrachium nipponense

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テナガエビ Macrobrachium nipponense
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

 本州および九州に生息する温帯型分布テナガエビ属の1種。
本種には遺伝的に分化した3つの型(河川型、淡水湖沼型、汽水湖沼型)が存在し、それぞれ生息環境が異なる。

河川型:河川河口~下流に生息し、小卵多産型である。
淡水湖沼型:淡水性の湖沼に生息し、大卵少産型である。
汽水湖沼型:汽水性の湖沼に生息し、中卵中産型である。

過去の文献によると、河口型および汽水湖沼型の生息域は一致し、関東以南および新潟以西に生息している。淡水湖沼型は仙台平野から西日本各地のダム湖等で見られるという。

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額角歯式は 2-3+7-11/2-4 で、額角は細長い木の葉型である。
ヤリ状額角のようにも見えるが、ザラテテナガエビなどに比べ上方への湾曲が緩く、幅広である。
本種はミナミテナガエビと似るが、より額角が細長く、触角鱗に達することが多い。

また、ミナミテナガエビとは頭胸甲側面の3本の斜横線の形状から区別することが可能である。
ミナミテナガエビは太い「m」であるが、本種は線が細く、真ん中は折れ曲がる
他にも胸脚の指節長が長く下流域に生息するエビらしい特徴が出る。

経験則だが、ミナミテナガエビよりも低温に強いと感じる。

 

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関東産 河川型の雌
ミナミテナガエビと同様の環境で採集されることも多いが、頭胸甲側面の3本の斜横線のうち真ん中の線が明らかに曲がっているので判別は容易である。
わかりづらい場合は、はさみに剛毛が多いという点でも同定できるが、この点を用いて同定した経験はない。

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関東産 河川型の雌
腹節側面下部に少し黒色の模様が出ている。このような模様は、ザラテテナガエビ やスベスベテナガエビの雌でも見られるため、抱卵するうえで何等かの利点があるのかもしれない。

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関東産 河川型(未成体)
このように斜横線が比較的まっすぐな個体は同定に悩むことがある。
加えて額角の長さからも判断が難しいため、第3胸脚の指節長が有効である。

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関東産の河川型の幼体
この大きさでも、頭胸甲側面の模様から十分同定できる。
経験則だが、ミナミテナガエビの幼体は斜横線が明瞭なため区別が楽である。
また、幼体は同じ環境を好むのか1網で100以上採れることもある。

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淡水・汽水湖沼型は、未採集であるため掲載していない。
採集が完了次第、掲載する予定です。

 

参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
・吉郷英範, 2002. 日本のテナガエビ属(甲殻類:十脚類:テナガエビ科). 比婆科学 206: 1-17.
・大野淳, N. ARMADA, 1999. テナガエビ属の種と地域個体群の分化. 海洋と生物(123): 319-329.

チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis

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チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>スジエビ

南は九州、北は宮城県まで記録がある外来のスジエビ
1969年以降に、「シラサエビ」として中国・韓国から釣り餌用に輸入されている。

日本の多くのスジエビ類とは異なり、純淡水性の生活史を持つ。
分散力が低いため、分布は広いが散在的である。

形態的にスジエビ Palaemon paucidens に酷似しているが、頭胸甲側面の模様で識別することが可能である。
加えて、眼柄と眼の比率や大顎の触髭の有無、尾節末端の形状で判別できるとされるが、それぞれの形態的特徴を総合的に判断する必要がある。
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額角歯式は 0-2+2-6/0-3 で、額角先端に歯が無いのが特徴である。
しかし筆者は、額角先端に鋸歯を持つ個体も確認している。
(ただし、スジエビほど先端寄りではない)

 

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本種はスジエビよりも眼が小さい傾向にある。
文献によると尾節先端は尖るというが、怪しい。少なくとも、デジタルカメラで撮影した限りではスジエビ(Aタイプ)との明瞭な差異は確認できなかった。

 

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神奈川県産の個体
頭胸甲側面の3本の斜横線のうち、最後方の線の上部がフック状に曲がる点がもっとも一般的な識別方法である。
スジエビに比べて、体色が全体的に白っぽい点も識別の際に有効である。

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東京都の池で採集された個体
フック状の斜横線がわかりにくいこともある。
経験則ではあるが、スジエビの「\ /」模様に対して、本種は「\l/」という模様になることが多い。

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東京都の池で採集された個体
これも経験則だが、スジ模様が赤褐色になる傾向があるように感じる。
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上の個体の額角
余談ではあるが、この固体は若干ではあるが額角先端に鋸歯を持っていた。


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スジエビのサンプリングが終わり次第、スジエビとチュウゴクスジエビの比較ページを作成する予定です。

 

参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 

・斉藤英俊, 2017. 外来釣り餌動物チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis の流通に及ぼす新輸入防疫制度の影響. 日本水産学会誌.
・斉藤英俊, 鬼村直生, 米谷公宏, 清水織裕, 小林薫平, 児玉敦也, 河合幸一郎, 2018. 外来釣り餌動物チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis の出現状況. 広島大学総合博物館研究報告 Bulletin of the Hiroshima University Museum 9: 33-39.
・内田大貴, 石塚隆寛, 加納光樹, 増子勝男, 池澤広美, 土屋勝, 2018. 茨城県菅生沼において採集された外来魚3種と外来エビ1種. 茨城県自然博物館研究報告(21): 149-153.
・長谷川政智, 森晃, 藤本泰文, 2016. 淡水エビのスジエビ Palaemon paucidens に酷似した外来淡水エビ Palaemon sinensis宮城県における初確認. 伊豆沼・内沼研究報告 10巻, pp. 59-66.

オニヌマエビ Atyopsis spinipes

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オニヌマエビ Atyopsis spinipes
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>オニヌマエビ属

南西諸島に生息している、体長75㎜を超える大型のヌマエビ類。
近年の研究で関東でも無効分散と考えられる個体が少数ながら記録されており、東限および北限は千葉県・神奈川県である。
沖縄島にも比較的多く生息しているが、八重山列島特に個体数は多い

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第1,2胸脚の先端は非常に長い剛毛に覆われる。
上写真のように剛毛を網のように広げることで浮遊物を摂食している。
特に夜になると早瀬の転石の側面などに張り付き、剛毛を広げている様子を観察することができる。

この独特な生態の影響か、形態は水の抵抗を受けにくい形になっていると感じる。

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額角歯式は 0+0/1-8 で短い。

体色は正中線に太い1本線体側には縦縞が多く入るのが特徴。同じような生態を持つミナミオニヌマエビとは体色で容易に区別が可能である。

河川全域の早瀬環境に生息しており、ミナミオニヌマエビが優占し始める最上流域では個体数が少ないように感じる。

本種とミナミオニヌマエビは、生態的・形態的に類似しているため、同属と思うかもしれない。しかし、オニヌマエビは1属2種のオニヌマエビ属である。(ミナミオニヌマエビはミナミオニヌマエビ属)

この2属の決定的な違いは、第3顎脚指節の形状である。
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ミナミオニヌマエビ属は先端に棘を持つが、先端に棘は無く剛毛に覆われる

本属は、オニヌマエビ A.spinipes とアジアロックシュリンプ A.moluccensis から構成されており、互いに形態的に酷似している。
アジアロックシュリンプは日本には生息していないが、額角の長さと下縁歯数で識別可能であるという。

 

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八重山列島で採集された個体
成体になる前はオレンジっぽい茶色であることが多い。
水の抵抗を受けにくそうな流線形のフォルムが独特である。

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沖縄島で採集された個体

正中線上の太い1本線と、体側の複数の縦縞が明瞭である。
経験上、本種は色彩変異に富むが、この体色が最も普通である。

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八重山列島で採集された個体

少し写真がブレているが、第6腹節に黒色の帯が出ている個体。
このような体色もしばしば見かけることがある。

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八重山列島で採集された個体
大型の雄の個体は、第3胸脚が肥大化する。
オニヌマエビの雄は第3胸脚を用いて交尾前ガードをするらしい。

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八重山列島で採集された雄の個体

体長65㎜程度のかなり大型の雄。これでも最大には10㎜届かない。
ここまで大きくなると、もはやヌマエビとは別の生物のようだ。

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八重山列島で採集された個体

地色が明るい黄色で、正中線上の縦線が黒く縁どられている個体。
加えて、体側にはあたかもシュガースポットのような黒斑が出ており、申し訳ないがバナナにしか見えない。
実際、英語圏では別名として"Banana Shrimp"と呼ばれる*ことがある。(通常はBamboo Shrimpと呼ばれている)
Googleで「Banana Shrimp aquarium」と検索した結果に基づく個人的な判断

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八重山列島で採集された個体

体色が茶褐色というよりも、青みがかった灰色というような感じの個体。
このような体色の個体も少なくない。
余談だが、本種をケースに入れて撮影すると写真のように変な姿勢でじっとしてしまうことが多いため、ケースに入れないで適当に済ませてしまうことが多い。

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八重山列島で採集された個体

特徴的な縦縞模様や正中線上のラインが明瞭な個体。
摂食時に使う第1・2胸脚はさみの剛毛束は折りたたむことができる

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関東で採集された個体
黒潮によって回遊してきたと思われる個体。この大きさでも特徴的な体色は鮮明である。
上述したが、関東に回遊してくる個体数は少なくなかなか見ることができない。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 2015. 三浦半島におけるオニヌマエビ(節足動物門:十脚目:ヌマエビ科)とコンジンテナガエビテナガエビ科)の記録. 神奈川自然誌資料(36): 41-44.

 

リュウグウヒメエビ Caridina laoagensis

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リュウグウヒメエビ Caridina laoagensis
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

南西諸島に生息している熱帯性のヌマエビ類。近年の研究で、無効分散と思われる個体が関東でも確認されている。

和名は非常にユニークであるが、見た目はトゲナシヌマエビと瓜二つで地味である。ただ、額角上縁に鋸歯が並ぶので、ルーペ等で観察すれば識別が可能である。

本種は、河川中・下流域の流れの速い環境に生息し、同じような流域に生息するヒメヌマエビやミゾレヌマエビとは異なる環境を好む。

 

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(左:雌の成体、右:雄の未成体)
額角歯式は 0+10-22/2-6 であり、頭胸甲上に鋸歯を持たない。
本種に類似しているオオバヌマエビも頭胸甲上に鋸歯を持たない個体が発見されており、歯式のみでの同定は難しい。
しかし、オオバヌマエビの鋸歯は本種のものより圧倒的に大きいため、識別は容易である。
余談だが、オオバヌマエビの継代飼育を行っている方に幼体の額角を観察させていただいたところ、鋸歯が小さく、リュウグウヒメエビとの区別が全くできなかった。そのため、幼体の同定は第5胸脚指節の観察も行ったほうが良いかもしれない。

 

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また、腹節背面の模様がトゲナシヌマエビと少し異なることが多い。
写真は双方ともリュウグウヒメエビであり、腹節背面の横縞は正中線と垂直である。
トゲナシヌマエビの斜めに入る横縞はあまり見られない。

しかし筆者の経験上、南西諸島では正中線と垂直な横縞を持つトゲナシヌマエビも少なくなく、この特徴のみで同定するのはお勧めしない。
結局のところ、色彩だけでなく形態も合わせて同定することが重要である。

 

近年の研究によると、琉球列島にはリュウグウヒメエビと近縁な種が複数種いるとされているが、今回扱うのはリュウグウヒメエビCaridina laoagensis1種である。

 

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東海地方産(雌)

正中線に金色の1本線が入るのも本種の特徴らしい。
また、腹節背面の正中線と垂直になる横縞も明瞭である
この固体は比較的赤みが強く、トゲナシヌマエビとの区別がしやすい。

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石垣島産(雌)

体全体に雪の結晶のような斑があり、非常に美しい。
腹節の横縞である程度同定することが可能である。

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関東産の個体(雄)

採集してから数日経過していることもあるが、雄のほうが色が薄いことが多く、同定が難しい印象である。
少なくとも、このような個体は額角上縁の鋸歯を確認しないと同定することができない。

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西表島産(雌)

紹介するのを忘れていたが、頭胸甲側面の「~」を逆にしたような模様は、Caridina laoagensis最大の特徴らしい。
ただし、この模様は生時にしか見られないことに加え、不明瞭であることが多い。

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沖縄島産(雌)

色彩的に上の西表島産の個体と類似している。
ただし、こちらの個体は頭胸甲側面の「~」模様が白色である。

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沖縄島産(雌)同行者採集

上の個体と同所的に採集された個体。
本種は他のヌマエビ類と比べても抱卵している確率が高いように感じる。
筆者の飼育経験上、トゲナシヌマエビやヤマトヌマエビと異なり、放幼後もすぐに抱卵することが多い。

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沖縄島産(雌)同行者採集

上の個体らと同所的に採集された個体だが、珍しく緑褐色であった。
経験上、本種の色彩は採集環境や地域ごとの特徴はないように感じる。

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沖縄島産(雌)

胸脚が欠落している個体。
写真整理していて気付いたが、尾扇後端が白色になっているため、オオバヌマエビと誤同定しないようにも気を付けたい。
そのため、慣れないうちは額角の形状で同定するのがよい。

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与那国島

頭胸甲側面の「~」模様と腹節背面の横縞が明瞭で、正中線に黄色の縦線が入るため、非常にわかりやすい個体である。
ただし、このような薄い地色に緑褐色の斑が出る個体は初めて見た。

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東海地方産(雌)

成熟した雌は、その他ヌマエビ類と同様に濃い体色になる傾向があるようだ。
腹節背面の正中線上の黄色線と垂直に交わる横線が明瞭である。
経験則だが、雌の個体は腹節背面の模様で同定できることが多いように感じる。

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東海地方産(雌)

上の個体と同所的に採集された個体だが、全体的に赤褐色で腹節背面の模様が不明瞭である。よく見ると頭胸甲側面の「~」を反対にした模様が確認できる。

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東海地方産(雄)

腹節背面の模様は確認できないが、正中線上の黄色の線が明瞭であり、頭胸甲側面の「~」のような模様も不明瞭ながら確認できる。
このような色彩は水槽等に入れると落ちてしまうことが多く、なかなか見ることができない。


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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 2017. 神奈川県および伊豆半島の河川から採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種. 神奈川自然史資料 (38): 29 - 35.
・丸山智朗, 福家悠介, 2018. オオバヌマエビの沖縄島からの初記録. Fauna Ryukyuana, 43: 11-17.

コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

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コンジンテナガエビ Macrobrachium lar
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

琉球列島で最も優占している最大体長150mmにも達する大型のテナガエビ
死滅回遊で本州にやってくることが知られているが、おそらく温排水の影響を受ける水域では死滅せず、再生産を行っていると考えられる。

 

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額角は鈍いヤリ状で、歯式は 2+5-7/2-4 と、テナガエビ類の中では上縁歯数が少ない類である。小型個体は、この特徴を用いて同定することができる。(ただし、幼体は頭胸甲上に1歯しかない。)

成体の体色は、上の写真のような個体がほとんどで、黒く長いはさみ脚が特徴的である。
長い鉗脚を持っているにもかかわらず、遡上力は凄まじい落差50m以上の滝上でも確認することができた。
そのため、河川中下流域から最上流域までいたるところで確認することができる。

 

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若い雄の個体。
特徴的なはさみの形状になっていないが、額角歯式で同定することができる。
また、若い個体は全体的に薄い茶褐色になる印象である。

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八重山列島産の成体雌。
気にしたことが無かったが、雌の個体は色が薄いのかもしれない。
はさみの先端は黒っぽくなるが、オレンジ色の模様があるのも特徴である。

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東海地方産の雌の個体
上述で雌の個体は色が薄いかもしれないとしたが、そんなことはなかった。
成体と言うにはまだ若い個体だが、体色は全体が濃い褐色である。

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東海地方産の幼体
成体に比べると黒い色素胞の数が少なく、全体的に薄い体色である。
この大きさでも比較的額角上縁の鋸歯は大きく、肉眼でも数えられる。

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東海地方産の幼体
この大きさの個体に多いが、頭胸甲側面に3本の斜横線が見られることがあるので、ミナミテナガエビ等との誤同定に注意したい。

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関東産の1㎝未満の個体。
慣れないとテナガエビかどうかも判別するのが難しいかもしれないが、慣れれば額角歯式を見るだけである程度同定することが可能となる。
ただ、この固体はコンジンテナガエビの可能性が高いが、コツノテナガエビの可能性もある。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 2017. 神奈川県および伊豆半島の河川から採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種. 神奈川自然史資料 (38): 29 - 35.
・吉郷英範, 2002. 日本のテナガエビ属(甲殻類:十脚類:テナガエビ科). 比婆科学 206: 1-17.

コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus

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コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

神奈川県以南の南西諸島の最上流域に生息しているテナガエビ属の1種。
内地での記録は無効分散によるものとされ、個体数は極めて少ない

南西諸島においても個体数は多くないが、場所によっては優占しているということもある。

体長は最大で96㎜程度と、熱帯性コエビ類としては比較的大型な種である。

本種は、筆者が知る限り最も上流域に適応したテナガエビで、海外の文献によると標高1300m以上の水域で記録されたこともあるという。
そのため、鉗脚や額角は急流域に適応したような形態となっている。

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例えば、鉗脚は他のテナガエビ類と比べて太く短い。
特に腕節が著しく短くなっており、三角形のような形となっている。

 

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額角歯式は 1-2+5-10/2-4上縁歯数は6~12歯と少なめである。
そのため、稚エビを同定する際には、この少ない鋸歯数が同定形質となり得る。
額角の形状は木の葉型とされているが、大型個体は写真のような上方に緩く湾曲した形状になることも多い。
また、稚エビの場合はコンジンテナガエビのように細いヤリ状である(下写真)。
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体色は、幼体では下の写真のように透明感のある色彩を有していることが多いが、成体では全体的に濃い褐色で味気ないことが多い。

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左:コツノテナガエビ(幼体)、左:チュラテナガエビ

 

 

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八重山列島で採集された雄
横から見るとわかりやすいが、額角は非常に広い木の葉状になっている。
まだ、若い個体の特徴である腹節背面の横縞が残っているが、全体的に濃い褐色になってきている。

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八重山列島で採集された抱卵個体
抱卵しているが、まだまだ若い個体であるため、腹節の横縞が鮮明である。
個人的な意見であるが、このサイズの体色が最も美しいと感じる。

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本州で採集された幼体
体長1㎝程度の個体であるが、若い個体の特徴である腹節の横縞は鮮明である。
ただし、撮影ケースに長く入れておくとあっという間に色が抜けるので注意。

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本州で採集された幼体
これは、採集してから長時間経過してから撮影した個体。
腹節の模様が不明瞭となり、同定は困難を極めるだろう。

本州でこのような個体を採集したら、額角を入念に調べる必要がある。
鋸歯数が少なければ、コンジンテナガエビかコツノテナガエビに絞ることができるほか、上記2種は幼体であればともに細長いヤリ状の額角であるので判別しやすい。
後は、飼育して体色が鮮明になったときに同定する必要があるだろう。

 

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参考文献一覧
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 2018. 相模湾および周辺海域流入河川において2016年8月以降に採集された熱帯性コエビ類5種の記録. 神奈川自然史資料 (39): 31-38.
・Robert A Irving, Terence P Dawson, Daisy Wowor, 2017. An amphidromic prawn, Macrobrachium latimanus (von Martens, 1868) (Decapoda: Palaemonidae), discovered on Pitcairn, a remote island in the southeastern Pacific Ocean. Journal of Crustacean Biology, Volume 37, Issue 4, Pages 503-506.

ヒメヌマエビ Caridina serratirostris

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ヒメヌマエビ Caridina serratirostris
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

南西諸島から関東や石川県にかけて分布する。
沖縄島や西日本では比較的個体数が多いが、関東や八重山列島では個体数はあまり多くないように感じる。

経験則だが、一般的に見られるヒメヌマエビ属の種(トゲナシヌマエビ、ミゾレヌマエビ等)よりも採集が格段に難しい
(無論、リュウグウヒメエビやサキシマヌマエビよりは採集しやすい)

体長は25㎜程度と、和名の通り小型のヌマエビである。

本種は、頭胸甲上に多くの鋸歯を有する点が特徴的である。
実際、種小名「serratirostris」は、「鋸歯状の額角の」というような意味であり、記載される際にもこの形態的特徴が注目されていたと考えられる。

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額角歯式は 7-8+10-17/2-9 とされているが、当てはまらないこともある。

本種は、近縁種のコテラヒメヌマエビと酷似している。
さらに文献によると、これらの種の中間的な形質を示す個体が発見されていることもあって、かつてこの2種を亜種とする意見もあった。

2020年の C学会において、このような分類的問題に関する発表があったと聞いているが文献等は公表されていないため、本ブログでは論文等が発表されるまでこの2種を同種として扱うことにする。

日本では Caridina という属名ヒメヌマエビ属と称しているため、人によってはヒメヌマエビがこの属のタイプ種だったり、最も普遍的であると感じるかもしれない。
しかし、ミトコンドリア16SrRNAやCytochrome oxidase subunit 1 を用いた研究によって、他のヒメヌマエビ属とはかなり早い段階で分岐しており、他種とは系統的に一線を画していることがわかっている。

 

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関東産の個体
ヒメヌマエビには大きく2つの体色パターンがある。
1つ目は白い横縞模様が入る個体である。おそらく、ヒメヌマエビと聞いて想像するのはこのような体色であると思われる。

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関東産の個体
もう一方の体色は、無地に正中線に一本線が入るタイプ。
上のより少し地味かもしれないが、関東ではこの体色のほうが多いと感じる。

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関東産の個体
ヒメヌマエビは全体的に赤色になる個体が多いと感じる。
この熱帯性の種を彷彿させるような色彩から、本種の飼育を考える人は多いかもしれない。筆者は実際に飼育したことがあるが、この体色の維持は非常に難しいと感じた。

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沖縄島産の個体
赤が多いと書いたが、カラーバリエーションは豊富である。
ただ、このような青い色彩の個体はあまり見たことがない。

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東海地方産の個体
個人的な経験だが、ヒメヌマエビの体色には茶~赤型青~黒型の2タイプが存在するように感じる。写真のような漆黒の個体は、色が薄まると青色になることが多いように感じる。

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関東産の幼体
熱帯性コエビ類の採集をしていると、10㎜程度の個体をよく見る。
このサイズでは写真のような体色をしていることが多い。

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紀伊半島産の個体
あまり採集したことはないが、写真のように縞模様がたくさん出る個体もいる。
正直、筆者の主なフィールドである関東ではなかなか見ることができない体色なだが、撮影を真面目にやらなかったことに後悔している。

 

上述した通り、コテラヒメヌマエビとの外部形態での識別が可能になるとの文研が発表され次第コテラヒメヌマエビのページを作成する予定です。
また、ヒメヌマエビ類は体色のバリエーションが豊富なので、ここに載せていないような体色の個体の撮影が終わり次第、更新していく予定です。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・朝倉彰, 2011. エビ・カニ・ザリガニ 淡水甲殻類保全と生物学 1 .4 淡水産コエビ下目の生物地理 75-102. 生物研究社. 東京.
・Page, T. J., Cook, B. D., Rintelen, K. v. & Hughes, J. M., 2008. Evolutionary relationships of atyid shrimp imply both ancient Caribbean radiations and common marine dispersals. Journal of the North American Benthological Society, 27: 68-83.
・鈴木廣志, 佐藤正典, 1994. 淡水産のエビとカニ, 西日本新聞社, 福岡.

ひとりで八重山行ってきた件 弐

おはようございます、ebina です🦐

前回に引き続き、八重山遠征報告の第2弾をやっていきます(^o^)
予告通り、今回はマングローブで採集された生物をピックアップしていきます!

▼前回の記事はこちら▼

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スネナガエビ Palaemon debilis

マングローブに無限に沸いてるスジエビの仲間ですね。
イッテンコテナガエビとは、額角下の色で区別できます
(普通に、雰囲気が全然違うのでわかります)

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ミゾレヌマエビ Caridina leucosticta

マングローブで採集したので、奴だと思ったんですが...
いや、明らかに違ったのでみじんも思ってませんね(笑)

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スベスベテナガエビ Macrobrachium equidens

久しぶりに淡水エビ同定に苦戦しました...(;'∀')
決め手は額角下縁に5歯という点と第3~5胸脚の指節長でした。
誤同定じゃなければ、ebina 初採集テナガエビ13種目となります !

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ヒメシオマネキ Gelasimus vocans

干潟にたくさんいたシオマネキです。
オキナワハクセンもいたのですが、写真取れませんでした...
訂正:シモフリシオマネキ

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ツムギハゼ Yongeichthys nebulosus

かの有名なフグ毒(TTX)を持つハゼです。
そのためか、全然動き回らず写真は撮りやすかった!

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クロホシマンジュウダイ(幼魚) Scatophagus argus

汽水魚の定番って感じなんでしょうね。(思い込み)
言葉では言い表せない。あえて言うならかわいい。

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ゴマフエダイ(幼魚)? Lutjanus argentimaculatus

ぱっと見での同定なので、あってる自信はないっす。
背びれの赤い感じとか、目元の瑠璃とかきれいですね✨

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タネハゼ Callogobius tanegasimae

最初見たときは、ミミズハゼの進化系かと思いました(無知の極み)
各鰭が大きくてなかなか見ごたえがあるハゼですね。

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カワヨウジ Hippichthys spicifer

この手の魚はめったに採集できないので、なかなか嬉しい(^o^)
全然知識ないけど、ヨウジウオも採集頑張ってみようかしら。

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ヤエヤマノコギリハゼ Butis amboinensis

いつか採集してみたいと思ってたのですが、案外にあっさりと。
ぺちゃんこな頭がスーパーぷりちー♡

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ジャノメハゼ Bostrychus sinensis

ぱっと見、ナマズかと思うくらい鼻先の突起が大きい( ゚Д゚)
いかにも、獰猛な見た目でそそられますねー!!

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フタバオサガニ

干潟で採れましたよくわからないカニ。はさみの先が紫でキレイ。

 

淡水エビ要素少なめでしたが、マングローブ域採集の報告は以上です(/・ω・)/
普段採集できないような生物がいっぱいで最高でした。またやります!

次回はいよいよメイントピック!八重山の清流採集記事です!

次の回はこちらから

生き物屋の皆さんならびに淡水エビ好きの皆さん、
今後ともどうぞよろしくお願いしますm(__)m

▼これまでの記事一覧はこちらから▼

ebina-1.hatenablog.com

 

 

ヤマトヌマエビ Caridina multidentata

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ヤマトヌマエビ Caridina multidentata
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

茨城県鳥取県から南西諸島まで広く分布しているヒメヌマエビ属の1種。
観賞魚店などでコケ取り用のヌマエビとして売られていることも多い。
最大で体長55㎜を超える大型なヌマエビで、小型のテナガエビよりも大きくなる。

水槽にいるものしか見たことがない人は知らないかもしれないが、河川上流域に生息していることが多い。
そのため、遡上力はすさまじく10m程度の砂防ダムや堰であれば、難なく乗り越える。

上述したように、河川上流域の清流を好むエビであるため、自然下で観察すること機会は少ないが、トゲナシヌマエビやヒメヌマエビとは異なり、冬の関東圏でも普通に観察することができる
実際、筆者が12月に本種を確認したときの水温は9℃であったため、低水温に対する耐性は他のヌマエビ類よりも秀ででいると思われる。

しかし現在では、本種の北限は太平洋側と日本海側ともに、トゲナシヌマエビやヒメヌマエビよりも南側である。

 

筆者の経験上、河川上流域の清流を好むため採集するのは難しいが、場所によっては優占していることが多い。
しかし、八重山列島では本種が生息している環境は少なく、採集が非常に難しいと感じる。

種小名の「multidentata」は、「たくさんの鋸歯を持つ」という意味。

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額角歯式は 0+13-30/3-18 と、名前の通り多くて数えるのが大変である。
(上の写真は和歌山県産の個体)

体色に関して、地色は半透明や緑色、赤色など多少の変異が見られるが、体側に平行な4本の点線が見られるのが本種の最大の特徴である。
雄の場合、この模様は明瞭な点線であるが、雌は鎖のような模様になる。
ただし、雄でも最上部の線は鎖状に見えることもあるので注意したい。

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また、尾肢には青色と白色の模様が出るのも本種の特徴である。
個人的な経験であるが、この模様は産地によって多少変異があるように感じる。
ちなみに、上写真は左が石垣島産で右が沖縄島産である。

 

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関東で採集された個体
本種の最大の特徴は、体側に並行する4本の点線である。

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関東で採集された雌の個体
雄と同様に4本の線が並ぶが、点というより線に近い模様である。

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近畿地方で採集された個体
写真では少しわかりづらいかもしれないが、尾肢表面に青い丸模様や白い斑がみえる。
ただ、この美しい色の模様は色が抜けやすいように感じる。

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八重山列島で採集された雄の個体
上述したように、本島~関東で普通にみられる本種であるが、八重山列島ではめったに見ることができないヒラテテナガエビでもこのような傾向があるため、分散パターンが似ているのかもしれない。

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八重山列島で採集された抱卵個体
上記で雌の体側の模様は鎖状になるとしているが、この個体の2列目と4列目は雄のような点線であった。このように、模様での性別判定は曖昧になることがあるので注意が必要である。

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東海地方で採集された幼体
体長2㎝未満の個体であったが、体色がはっきりとしており本種の特徴である体側の模様が鮮明である。全体的に緑色の色素胞があり、非常に美しい個体だ。

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関東で採集された幼体
体長が小さい個体は体側の模様が不明瞭であることが多いので、リュウグウヒメエビ等と誤同定しないように注意したい。
ヤマトヌマエビのほうが体が細長い傾向があるので判別可能。

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関東で採集された幼体の額角
余談ではあるが、関東で採集したリュウグウヒメエビ額角歯式のみで同定するのはお勧めしない。

経験則だが、関東産のヤマトヌマエビの上縁歯数は少ない傾向があることに加え、13㎜未満の個体では額角歯数が成長段階にあることもある。
結果、写真のようにヤマトヌマエビでありながら上縁歯数が12歯以下という個体と遭遇しやすい。

ヤマトの稚エビは写真のような額角(細くて長い)であることが多いので、区別は不可能ではない。
ただ、一定期間飼育した方が同定の制度はよいだろう。

 

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参考文献一覧
・丸山智朗, 2016. 本州日本海側における両側回遊性コエビ類の分布について. Cancer 25: 55-60.
今井正, 2004. 秋田県鶴潟沼に生息するヌカエビの成長に伴う額角歯の増加. 水産増殖 52(3): 259-264.
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・
カニ図鑑, 緑書房, 東京.

採集日記 2020-10月号

おっす、めーす!! ebina で~す🦐
(最初の挨拶、考えるのに毎回10分以上かけてます。許してください。

いやぁ~、最近ブログ書くのさぼってたら、12月になってました( ;∀;)

そろそろこのブログも公開を考えていたところなんですけどねぇ。。

さて、今回は10月の採集日記を書いて行くのですが、、今年の10月は淡水エビ採集のベテランの方に採集に連れて行ってもらった結果!!
なんと!!! めちゃめちゃすごいのいっぱい採れた!!!
けど、全然写真撮ってなかったぁぁぁぁ。という状況に陥りました( ;∀;)

まぁそれなりに写真はあるので、紹介していきます。

 ▼先月号はこちら▼

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コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

いや、熱帯性コエビ類とは??ってレベルで採集できました。
正直、ebina の中のコンジンテナガエビの株価が暴落しました(笑)
その中でもひときわ大きかったのがこの固体です。

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ザラテテナガエビ M.australe

ザラテも採集することができました!!
幼体ならではの長く伸長するヤリ状額角が、ebina の心に突き刺さりました。。

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コツノテナガエビ M.latimanus

はい。マジで関東にいましたこのエビ(笑)
本当に沖縄でもそんな採集できないのが、関東にいるんですよぉぉ。。。
個人的に、一番レアな死滅回遊エビだと思っていたので喜びが半端ないっす。

つまり、この10月で現時点で報告されている死滅回遊性のテナガエビ類をすべて採集することができたんです°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

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リュウグウヒメエビ Caridina laoagensis

これも関東初採集でした。(8月の個体は誤同定です)
トゲナシヌマエビとは全く違う、レアなオーラが漂ってます。
特に、正中線に金色のラインが入るというのがかっこいい!!

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ヒメヌマエビ類 Caridina serratirostris

関東の川にこんな真っ赤なヌマエビが生息しているのが想像できますか?
これが在来種なんですよ!! 日本の川も捨てたもんじゃないですね!!
一応、コテラ説があるのでヒメヌマエビとは断定していません。

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オニヌマエビ Atyopsis spinipes

今回は全部が全部レア種すぎるので、感覚がマヒしているかもしれませんが
普通はこんなエビは採れませんよ(笑)
まさか、初心者のebina がこんなレアなヌマエビを採集することができるとは思いませんでした。

たった6枚の写真しか掲載していませんが、ebina の記事史上最も豪華な記事かもしれませんw
なんて言ったって、ここに掲載しているエビはヒメヌマエビを除いて、すべて熱帯性コエビ類ですので、この時期にしか狙えない激レア種なんです。

本当は、これ以外にも、熱帯性のカワアナゴ類とかオオヒライソガニ類、ヤマトヌマエビといったすごい生物を採集することができましたが、撮影していなかったのでまた来年期待していてください!!

生き物屋の皆様、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

▼これまでの記事一覧はこちら▼ebina-1.hatenablog.com

 

 

ひとりで八重山行ってきた件 壱

こんにちはー、Crazy Shrimp 管理人のebinaです🦐

今回は、八重山諸島に採集遠征に行ってきたのでその報告をします!

と。その前に、タイトルの説明をしていきます(笑)
ひとりで八重山行ってきた件って... 別に普通やろって思うかもしれませんが。
実は、ebina 1人で飛行機に乗ったことなかった。ていうか、ひとりで遠出したことなかったんですよΣ(゚Д゚)

もともとこの遠征は、友達と一緒に行く予定だったのですが、まさかのキャンセルで急遽ひとり旅になってしまったんですね。
しかも、ebina 運転免許を取ってから9日しか経過してないのに、ひとりでレンタカーするという。採集でヘトヘトになった状態で運転し続けるというなんとも無謀な企画でした。
おまけに強力な熱帯低気圧に襲われたり、スマホを水没させたりと様々なハプニングに見舞われ、散々な遠征でしたね(笑)

はい。

前置きが長いと面倒な奴って思われるかもしれないので
とっとと報告に入っていきますよー°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

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コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

まぁ、南に行ったらこいつが一番最初に採れますよね(笑)
どこにでもいる、キングオブ普通種って感じです(`・ω・´)
何がすごいって、デカいだけじゃなくて遡上力も強いところよ。
歌って踊れるアイドル的な何かを感じるね(意味不)

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トゲナシヌマエビ Caridina typus

こちらは、ヌマエビ界のキングオブ普通種ってところでしょうか。
別にたくさんいるのはいいんだけど、オオバとかリュウグウとぱっと見同じってところが許せないんだよーorz
まぁ、こいつが学名的にタイプ種だから文句言えないけど。。

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オニヌマエビ Atyopsis spinipes

こいつも八重山じゃ常連の顔ぶれですね。ただ、デカい
2枚目がデカすぎて、1枚目がちっさく見えるという(笑)
体長60㎜近いって、もはやテナガエビ級のサイズ。ひゅーじ。

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ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum

本州だと普通種だけど、八重山だと実はレア種だったりする。
ネッタイテナガエビのほうがよっぽど多い気がします(笑)

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ネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum

本島じゃあまり見られない、いい感じの色彩のテナガエビ
ただし八重山では、もはや普通種ですね。

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オオクチユゴイ Kuhlia rupestris

たまに手違いで網に入ってくるデカい魚( ゚Д゚)
フライにして食べたら絶対うまいでしょ(笑)

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クロヨシノボリ(多分) Rhinogobius brunneus

写真撮るまでシマヨシだと思ってたやつ。関東だと激レアだけど、こっちだとめっちゃたくさんいてビビる(;゚Д゚)

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ヤエヤマイシガメ Mauremys mutica kami

休憩中、近くにいたので撮影しました。
小っちゃくてぷりちーなカメですな♡


とりあえず、壱はこのあたりでストップしておきます。
初回ということもあり、普通種多めで申し訳ありません。

次回は、ebina 初の本格的なマングローブ採集をピックアップします!
淡水エビは、、。さておき、普段見れない生物が採集できたので乞うご期待!

生き物屋の皆さん、淡水エビ好きの皆さん
今後ともどうぞよろしくお願いしますm(__)m

次の回はこちら

 

▼これまでの記事はこちらから▼

ebina-1.hatenablog.com

 

採集日記 2020-9月号

おはようございます、ebina です🦐

いやぁ、暑かった夏もあっという間に終わっちまいましたね(笑)
しかーし!!関東圏のエビ採集の夏は始まったばかりですね!!
今月は休みの日が多かったこともあり、たくさんの採集に行けたので
早速、報告に入っていきますよー(≧▽≦)

▼先月号はこちらから▼

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カワヨシノボリ Rhinogobius flumineus

先月採集のものと違い、ちゃんと上流まで行って採集してきました!
この水域は小型個体ばっかりだったのですが、1枚目の個体は巨大でしたね( ゚Д゚)

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ヒナハゼ Redigobius bikolanus

河川中流域で採集してたら見たことない魚が採れて興奮しましたが
下流に移動したら無限に採集できてちょっと落ち込みました。。
何はともあれ、初採集の魚なので嬉しいです(^o^)

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テングヨウジ Oostethus brachyurus brachyurus

さりげなーく関東で初採集のヨウジウオ類。
沖縄で何度か見てるけど、採れるとテンション上がりますね!
ebina が使ってる観察ケースには到底入りそうにもなかったので、日陰の地面において撮影させていただきました。ごめんね!

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根鰓亜目の1種 (ウシエビとか?)

すみません。エビ好きとか言ってますけど、根鰓亜目全くわかりません...
河川で採集できるから汽水性エビ図鑑に載ってればいいんだけどね。

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テナガエビ Macrobrachium nipponense

そーいえば、ちゃんと写真撮ってなかったな。と思ったので撮影しておきました。
ちゃんと観察してみると額角とかかっこいいと思いません?

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ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense

上と同じ理由で、ちゃんと撮影してみました。
(あれれー? 額角とかブレてないっすか?)

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ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum

このサイズのオスってなぜかあまり採れないんですよね。。
第3腹節背面の黒い横線がはっきりしてて若々しいね。

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Macrobrachium sp. (同定できませんでした)

額角歯式からコンジンコツノなのですが、当時のebina はコンジンと同定しました。
ただ後々見てみると、腹節背面に横線が入ってるように見えなくもない。。。
よし、もう一回同定するか!といって水槽内を見たら、どこにもいなかった( ゚Д゚)

つまり、コツノかもしれないエビが1日で行方不明になって発狂したってことです。
これからは1回1回の同定を集中してやっていきたいところですね...

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トゲナシヌマエビ Caridina typus

実は関東の河川では初採集のエビなんですよね。。
なんかいないところには全くいない、いるところには無限にいるって感じでした。

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カワリヌマエビ属の1種 Neocaridina sp.

いやぁぁぁぁ。。。。(;゚Д゚)
ついに採れちゃったかぁって感じです。一応この河川でも少数ながら記録はあったので覚悟はしていたのですが、かなり衝撃を受けました。。
在来ヌマエビ類(特にヌカエビ)に嫌な影響が出ないことを祈るしかありません。

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白いミゾレヌマエビ Caridina leucosticta

先月に引き続き、また1個体のみ採集できました。
気になる点はありますが、おそらくミゾレの色変でしょう。

 

ここからは、友人に連れられて行ってきた川素潜り!?の写真です。
ダイブしてる最中はテンションがハイになりすぎて気づかなかったのですが、撮影した写真はどれもブレブレでした( ;∀;)
ここに載せるのも恥ずかしいですが、一応楽しかった夏の思い出として貼っときます。

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イトモロコ Squalidus gracilis gracilis

コイ科魚類マジでわからないです。友人に同定していただきました。

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スジエビ タイプA Palaemon paucidens

とりあえず大きすぎて、遭遇したときに圧倒されます!
陸上だとスジエビなのに、水中だとスジエビなんですよね(迷言)

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ムギツク Pungtungia herzi

日淡なのに熱帯魚でいそうな感じ、このサイズはやっぱりかわいい!!
え、ぼやけてるって?目を細めてみたらいい感じですよー(^o^)

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アメリカザリガニ Procambarus clarkii

アメザリに興奮したのは小学校以来でしょうか。
潜ればわかります。水中だとまじでロブスターに見えます。

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ウキゴリ Gymnogobius urotaenia

今回のダイブで一番衝撃を受けました。
出会った瞬間、カワアナゴ類を彷彿させるような巨体に目が離せませんでした。

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ヒガシシマドジョウ Cobitis sp. BIWAE type C

素潜りの良いところは、生物のありのままの姿を見れるところですよね。
こんなかわいいドジョウが\コンニチハ/って顔出してたら誰だって惚れます。

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ヌマエビ類 Atydae spp.

なんていうか、普段採集しているエビがどんな生活を送っているかをのぞかせていただきましたって感じです。
沈水植物や落ち葉、テトラポッドの側面などありとあらゆる場所をエビたちが活用しているのを見て感動しました。

あまりの感動に興奮しちゃって、写真がぶれちゃいましたー(棒)

 

てなわけで、今月号はこのあたりで終了しておきたいと思いまーす。

実は、今回載せられるような写真が無かったので報告しませんでしたが
ヤマトヌマエビコンジンテナガエビの稚エビなどなかなか珍しいエビも採集することができました

さすが死滅回遊の秋って感じですね。

こんな季節ももうそろそろ終わりが近づいてきましたが、最後の最後までレアなエビを求めて採集を続けていくので今後ともどうぞよろしくお願いします!!

▼これまでの記事一覧はこちらから▼ebina-1.hatenablog.com

 

ネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum

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ネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum 
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

口永良部島以南の南西諸島に生息するテナガエビ属の1種。
環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されているが、筆者の経験上、同著で準絶滅危惧に指定されているツブテナガエビよりも生息河川および個体数がはるかに多いため、絶滅の懸念は低いと考えられる。
個人的な推測だが、これは本種と本種に近縁な希少性テナガエビ類が混同されている状態でレッドリストが作成されたためであると考えられる。
追記:以前は個体数が少なかったのかもしれない。

体長は55㎜程度と比較的小型なテナガエビ類である。
生息域は河川中流域の早瀬環境であり、カスリテナガエビやマガタマテナガエビツブテナガエビオオバヌマエビなど多くの早瀬を好むコエビ類と同所的に採集されることが多いが、個体数が多いからかこれらの種よりも生息流域が広い印象である。
余談だが、筆者は本種の生息状況を1つの指標にしてコエビ類の採集地を選んでいる。

 

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額角歯式は 5-7+4-6/2-3 で、額角は細い。
また、額角先端は第1触角柄先端に届かないという。
 

本種はネッタイテナガエビ種群に含まれ、同種群にはカスリテナガエビマガタマテナガエビが含まれている。
これらの種は形態や色彩が酷似しており、慣れないと同定が難しいと感じるかもしれない。
ただし、佐伯ら(2018)にも記述されているように、生時の色彩から区別することができる

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(上から ネッタイ、カスリ、マガタマ)

本種の体色は、赤色や赤褐色の個体が多いが、茶褐色や暗青色の個体も見られるため色彩変異に富むと考えられるが、頭胸甲側面に赤褐色の3本の縦縞見られるほか、第3腹節背面に白色の横帯が見られるなどの特徴がある。
しかし、この2つの特徴はマガタマテナガエビと共通しており、本種群の同定が難しいとされる要因となっている。
ちなみに本種とマガタマテナガエビの識別は、腹節側面に赤褐色の1本の縦線があるか否かで区別することができる。(ネッタイテナガエビは線を持たない)

 

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沖縄島産の個体(雄)
この体色が最も一般的。赤茶の体色で腹節背面に白い横縞が入り、頭胸甲側面にも複数の縦縞が入る。

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八重山列島産の個体(雄)

上の個体と同様に腹節背面の色彩が非常に美しい。
雄の個体では、第3腹節背面の白色横帯が腹節下部に到達することは多くないが、この個体では達している。

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八重山列島産の個体(雄)

上の個体とは違い、腹節の白色帯の数が少ない。
マガタマテナガエビとは体側に1本の赤い線が無いという点、カスリテナガエビとは頭胸甲側面の模様で識別できる。

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八重山列島産の個体(雄)

体色が緑褐色で、マガタマテナガエビのような個体。
しかし、腹節側面に暗褐色の1本の縦線がないため、本種と同定することができる。
要するに、色彩的特徴は同定に有効であるが、体色それ自体は当てにならないことが多い。

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八重山列島産の個体(雄)同行者採集

観察ケースに収まっていないほど立派な個体。
このような大型個体はほとんど見ることができない。

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八重山列島産の個体

個人的に色彩的特徴がわかりやすい個体だと感じる。
第3腹節背面後部に白色帯が入り、その後端は黒く縁どられる。
頭胸甲側面に暗褐色の複数本の縦縞が入る。

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八重山列島産の個体

地色がかなり赤いが、決して茹でたわけではない。
琉球列島の一部の島では個体数が多いが、チュラテナガエビのような本種よりも個体数が少ない種が多数記録されているような島でも一切記録がないこともあり、島ごとの個体数の差が大きいと感じる
もちろん、このような話は他の種にも当てはまるが、非常に興味深い。

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沖縄島産の個体 同行者採集

上の個体とは異なり、暗青色で非常に美しい個体。
この色彩の個体は滅多に見ることがないが、同所的に採集された個体も青みが強かったことから、体色は環境によって左右されると推測される。

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八重山列島産の個体(雌)
若干色が濃い個体。カスリテナガエビと酷似しているが、頭胸甲側面に絣模様がないため、ネッタイテナガエビと同定できる。

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八重山列島産の個体(雌)
撮影が長引き、色が薄まってきた個体。このような個体はヒラテテナガエビのような体色になるので、鉗脚が欠落していると同定に悩むことがある。
抱いている卵は多くのテナガエビ類と同様に緑色である。

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沖縄島産の未成体

経験上、沖縄島ではこのような小型個体をよく目にする。
本種はヒラテテナガエビと異なり、頭胸甲側面の縦縞の色が赤っぽいことが多い。

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沖縄島産の幼体 同行者採集

赤と青のグラデーションのようになっている個体。
非常に美しいが、頭胸甲側面の模様などから本種と同定される。

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八重山列島産の幼体

体長15㎜未満の個体であるが、色彩ははっきりとしており容易に同定することができる。幼体を同定する際には、色彩が最も有効であるため色落ちする前に撮影するのが良い。

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沖縄島産の未成体

ケースを忘れたため水中で撮影した個体。
頭胸甲後部に緑色の卵巣が見えるため、おそらく雌の個体。
この大きさでも抱卵できると推測される。

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八重山列島産の個体(雌)
色が薄い雌の個体はヒラテテナガエビとの区別が凄まじく難しい。
有識者の方に同定していただいた結果、第3腹節の横縞が腹側まで伸長している点から本種であるらしい。

筆者が独自に調査を行った結果、眼窩後縁から最も後ろの鋸歯の基部までの長さ / 頭胸甲長の値を用いてある程度の同定は可能であるという結論に至った。
まだサンプル数が少ないのでズレがあるが、ネッタイテナガエビは0.45程度、ヒラテテナガエビは0.38程度という結果が得られている。

こちらに関しては筆者がネタ半分で研究を進めているので、ちゃんとした結果がわかり次第、こちらのブログでも紹介する予定です。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・佐伯智史・前田健・成瀬貫, 2018. 琉球列島産ネッタイテナガエビ種群3種 (甲殻亜門: 十脚目: コエビ下目: テナガエビ科)の分類と形態. Fauna Ryukyuana 44: 33–53.
・佐伯智史, 2017. カスリテナガエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅の恐れのある野生生物 第3版(動物編)ー レッドデータおきなわ ー. Pp. 313, 沖縄県環境部自然保護課, 那覇市.
・讃岐斉, 渡邊卓実, 大富潤, 駒井智幸, 2019. 鹿児島県口永良部島から得られたネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum(十脚目: コエビ下目: テナガエビ科)の北限記録, 日本生物地理学会会報(74): 100-106.

 

チュラテナガエビ Macrobrachium sp.

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チュラテナガエビ Macrobrachium sp.
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

日本に生息する未記載テナガエビ2種のうちの1匹(もう1種はカスリテナガエビ
体長約40mm程度とおそらく日本産既知のテナガエビ類の中では最小
未記載種であるという点からもわかるが、依然として分類学的地位が定まっておらず、レッドデータおきなわでは情報不足のカテゴリーに分類されているほか、個体数は極めて少ないと明記されている。

現在のところ、宮古島石垣島西表島で記録されている。
しかし、宮古島の生息地では大規模な工事によって環境が変わり、現在は生息が確認されていないという。
余談だが筆者はその他地域でも本種を記録しており、現在報告の準備中である。

生息域は河川中上流域の早瀬環境で、同所的にネッタイテナガエビコツノテナガエビオニヌマエビが採集されることが多い。
経験則だが、ネッタイテナガエビよりも比較的上流域で採集されることが多い。

体色や形態的にはコツノテナガエビの未成体と似ていると感じる(下写真)。
双方ともに腹節のに暗色の横縞が複数入るが、コツノテナガエビの方が直線的で細い。

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左からコツノテナガエビ、チュラテナガエビ

ちなみに、放幼においてもコツノテナガエビと類似している。
筆者の自宅で飼育している抱卵を観察したところ、コツノテナガエビやオニヌマエビ類と同様に、強いエアレーションを呈した飼育槽内であっても放卵(放幼)せずに、発眼後長期にわたって抱卵し続けた。(発眼卵をスポイトで採取しエアレーションをかけたところ、1時間以内にほとんどの卵が孵化した)
このことから本種はコツノテナガエビなどと同様に、強い流れのある環境でしか放幼しないことが推測される。
また、ゾエア幼生の至適塩濃度は28‰前後で、筆者の飼育では着底まで至らなかったが、少なくとも2か月以上の浮遊期間を有することがわかった。おそらく腹肢が形成されていた点から第9~11ゾエア期程度までは生残していました...

 

憶測だが、成熟した雄は黒が強くなる傾向があるように感じる。
第2胸脚は黒い指節に対して掌部は白くなることが多い。

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額角の形状はネッタイテナガエビ種群のものより幅が広く、木の葉型に近い。
また、額角歯式は3+6-9/3とされているが、筆者は写真のように頭胸甲上に4歯持つ個体を確認している。

鉗脚に関しては、成長段階や性別によって形態が大きく異なることが多い。
成体の雄の個体は掌部が大きくなり、ヒラテテナガエビのような形状になる。
加えて、鉗脚は左右対称である場合と非対称である場合がある点ヒラテテナガエビと類似している。

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上の写真は脱皮殻であるが、雄の第2胸脚不動指には明瞭な1つの棘があり、可動指はそれとかみ合うように小さな2つの棘の間に窪みがある。
また、鉗脚の掌部や可動指には小棘が密生する。
上述したように、鉗脚の指節は黒色になるが、この色は脱皮殻においても維持されることから、本種を同定するうえでの同定形質になり得ると感じる。

 

余談だが、台湾などで記録されている M.horstii と酷似している
個人的な憶測ですが、筆者は台湾産の M.horstiiとチュラテナガエビは同種で、真のM.horstiiは形態的に異なる別種ではないかと思っている。
このあたりの分類に詳しい方は、コメントでご教授いただけると幸いです。

 

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八重山列島産(雌)
頭胸甲内に緑色の卵巣が発達しているのが見える。
具体的な同定形質を紹介していなかったが、少なくとも筆者は頭胸甲側面後方の1本の明瞭な曲線の確認を重要視している。
ただ、色彩的に類似する種がいない(せいぜいコツノテナガエビの幼体)ため、同定に苦労することは無いと感じる。

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八重山列島産(雄)
体長35㎜程度の成熟した雄の固体。上の雌と比べると黒っぽい
また、この固体も頭胸甲上に鋸歯が4歯あるように見えます。

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八重山列島産(雄)
上方から見てみると、大鉗脚掌部がかなり大きいことがわかる。
小鉗脚は1度欠落したように見えます。
撮影が長引き若干色が落ちてますが、掌部はもっと明確に白いです。

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八重山列島産(雌)

このように金色が際立つ美しい個体はなかなか見ない。
これに関しては和名を提唱した方のセンスをすごい感じる。

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八重山列島産(雌)(同行者採集)

おそらく、このような体色がベーシックなものである。
腹節の横縞や頭胸甲側面の斜横線は赤茶褐色であることが多く、鉗脚掌部は指節と対照的な白色を呈する。

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八重山列島産の幼体

幼体に関しては、画像資料が少なく同定に自信が持てない。
ただ上の個体らと同様に、腹節に茶褐色の横帯がある点、頭胸甲側面に斜横線がある点、鉗脚掌部が白色(透明)である点などから本種と同定できる。

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八重山列島産の幼体

上の個体以上に色彩が薄い幼体。
幼体の鉗脚指節は透明で、可動指と掌節の継ぎ目に茶褐色斑を有するようだ。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・林春吉, 2007. 台灣淡水魚蝦生態大圖鑑(下). 天下遠見出版.
・藤田喜久, 2017. チュラテナガエビ(仮称). 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 348-349, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
伊藤茜, 藤田喜久, 諸喜田茂充, 2005. コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus(Von Martens, 1868)の卵発生と孵化. Cancer 14: p5-8.

家族旅行ついでの福井遠征

どうもー、最近睡眠不足のebina です🦐

 

コロナの自粛ムードもだいぶ落ち着いてきたこともあり
家族旅行として、福井にある親戚のうちに旅行に行ってきましたー。

と、まぁ、生き物屋として旅先で採集しないのは論外ですよね(笑)
いつかの偉い方も「なぜ採集するのですか?」と聞かれ
「そこに、川があるから」と答えたようにebina も採集に行ってきました。

そんなどうでもいい茶番は置いといて、さっそく報告に移っていきますよ!

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シマイサキ Rhinchopolates oxyrhynchus

沈水植物をガサガサしていたらたくさんとれました!
関東にも生息してますが、汽水弱者なので初採集の魚です...

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ミウキゴリ Gymnogobius petschiliensis

これは関東でもたくさんとれる魚ですね!
あまりにも普通種なので撮影したのは初めてでしたが(笑)

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ミゾレヌマエビ Caridina leucosticta

これも関東で普通にとれるヌマエビですねー。
初めての日本海にそそぐ河川でしたが、悲しくも親近感を感じました(涙)

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トノサマガエル Pelophylax nigromaculatus

ここは河川ではなく観光地の池ですが、大量に沸いてました(笑)
地元じゃ見れないカエルなので、思わぬところで遭遇できてラッキー!

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シマヨシノボリ Rhinogobius nagoyae

どこにでもいるヨシノボリですが、こんなに立派な個体は初めて見ました!!
正直、あまりにも大きかったので最初はオオヨシかと思ったほど。。

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シマドジョウ類

生息地的にはニシシマかオオシマなのですが、ebina には見当もつきません(笑)
とりあえず、普段採集できるヒガシシマではないので初採集の魚(^o^)

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ヌマエビ Paratya compressa

福井県で最も多く採集できたエビでしたね🦐
(やべぇ、全然コメントすることが無いわ...)

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ヤマトンボ類のヤゴ?

足元にかなり大きなヤゴがいたので撮影。
擬態が上手なのか、ピントが全然あってくれませんでした。。

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ドジョウ

どこの川に行ってもドジョウは生息しているんだなーと実感しました。
日本海側のドジョウと関東のドジョウでは遺伝的に異なっていたりするのかな?

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ドンコ Odontobutis obscura

関東でも採集できますが、実は移入されてきた国内外来種( ゚Д゚)
こいつは生息地的に、正真正銘の在来分布のドンコだと思います(^O^)

 

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クロヨシノボリ? Rhinogobius burunnus

弱っていたのか、適当に掬ったら採集できました(なんかごめんね)
クロヨシは割とレアな種らしいので、もしかしたら誤同定かもしれません。。

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福井県の山奥の風景

とりあえず、関東の河川と比べて透明度が高い河川が多かったです。
正直、ウェットスーツを着て素潜り撮影したくなるような場所でした(*´▽`*)

こんなところで、かなりしょぼかった福井遠征の報告を終了したいと思います。
余談ですが、写真撮影を忘れたのですが、エビ類としてミナミテナガエビヒラテテナガエビトゲナシヌマエビの稚エビが採集できましたが、やはり太平洋側のほうが回遊してくる量は多いように感じました。

本当に、遠征記事とは思えないくらい薄い記事を書いてしまって申し訳ないのですが、生き物屋の皆さん、今後ともどうぞよろしくお願いしますm(__)m

▼これまでの記事一覧はこちら▼ebina-1.hatenablog.com