Crazy Shrimp

Crazy Shrimp is not as crazy as it sounds, but sometimes lazily and sometimes intensively, collects, researches and observes not just Japanese freshwater shrimps and prawns, but also saltwater shrimps, fish and many other aquatic creatures.

ネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum

f:id:ebina-1:20200903031526j:plain
ネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum 
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

口永良部島以南の南西諸島に生息するテナガエビ属の1種。
環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に分類されているが、筆者の経験上、同著で準絶滅危惧に指定されているツブテナガエビよりも生息河川および個体数がはるかに多いため、絶滅の懸念は低いと考えられる。
個人的な推測だが、これは本種と本種に近縁な希少性テナガエビ類が混同されている状態でレッドリストが作成されたためであると考えられる。
追記:以前は個体数が少なかったのかもしれない。

体長は55㎜程度と比較的小型なテナガエビ類である。
生息域は河川中流域の早瀬環境であり、カスリテナガエビやマガタマテナガエビツブテナガエビオオバヌマエビなど多くの早瀬を好むコエビ類と同所的に採集されることが多いが、個体数が多いからかこれらの種よりも生息流域が広い印象である。
余談だが、筆者は本種の生息状況を1つの指標にしてコエビ類の採集地を選んでいる。

 

f:id:ebina-1:20210511201028j:plain
額角歯式は 5-7+4-6/2-3 で、額角は細い。
また、額角先端は第1触角柄先端に届かないという。
 

本種はネッタイテナガエビ種群に含まれ、同種群にはカスリテナガエビマガタマテナガエビが含まれている。
これらの種は形態や色彩が酷似しており、慣れないと同定が難しいと感じるかもしれない。
ただし、佐伯ら(2018)にも記述されているように、生時の色彩から区別することができる

f:id:ebina-1:20210511203046j:plain
(上から ネッタイ、カスリ、マガタマ)

本種の体色は、赤色や赤褐色の個体が多いが、茶褐色や暗青色の個体も見られるため色彩変異に富むと考えられるが、頭胸甲側面に赤褐色の3本の縦縞見られるほか、第3腹節背面に白色の横帯が見られるなどの特徴がある。
しかし、この2つの特徴はマガタマテナガエビと共通しており、本種群の同定が難しいとされる要因となっている。
ちなみに本種とマガタマテナガエビの識別は、腹節側面に赤褐色の1本の縦線があるか否かで区別することができる。(ネッタイテナガエビは線を持たない)

 

f:id:ebina-1:20200903032246j:plain
沖縄島産の個体(雄)
この体色が最も一般的。赤茶の体色で腹節背面に白い横縞が入り、頭胸甲側面にも複数の縦縞が入る。

f:id:ebina-1:20210511205415j:plain
八重山列島産の個体(雄)

上の個体と同様に腹節背面の色彩が非常に美しい。
雄の個体では、第3腹節背面の白色横帯が腹節下部に到達することは多くないが、この個体では達している。

f:id:ebina-1:20210511204354j:plain
八重山列島産の個体(雄)

上の個体とは違い、腹節の白色帯の数が少ない。
マガタマテナガエビとは体側に1本の赤い線が無いという点、カスリテナガエビとは頭胸甲側面の模様で識別できる。

f:id:ebina-1:20210511211343j:plain
八重山列島産の個体(雄)

体色が緑褐色で、マガタマテナガエビのような個体。
しかし、腹節側面に暗褐色の1本の縦線がないため、本種と同定することができる。
要するに、色彩的特徴は同定に有効であるが、体色それ自体は当てにならないことが多い。

f:id:ebina-1:20210511211749j:plain
八重山列島産の個体(雄)同行者採集

観察ケースに収まっていないほど立派な個体。
このような大型個体はほとんど見ることができない。

f:id:ebina-1:20210511205420j:plain
八重山列島産の個体

個人的に色彩的特徴がわかりやすい個体だと感じる。
第3腹節背面後部に白色帯が入り、その後端は黒く縁どられる。
頭胸甲側面に暗褐色の複数本の縦縞が入る。

f:id:ebina-1:20210511205407j:plain
八重山列島産の個体

地色がかなり赤いが、決して茹でたわけではない。
琉球列島の一部の島では個体数が多いが、チュラテナガエビのような本種よりも個体数が少ない種が多数記録されているような島でも一切記録がないこともあり、島ごとの個体数の差が大きいと感じる
もちろん、このような話は他の種にも当てはまるが、非常に興味深い。

f:id:ebina-1:20210511212730j:plain
沖縄島産の個体 同行者採集

上の個体とは異なり、暗青色で非常に美しい個体。
この色彩の個体は滅多に見ることがないが、同所的に採集された個体も青みが強かったことから、体色は環境によって左右されると推測される。

f:id:ebina-1:20210511204514j:plain
八重山列島産の個体(雌)
若干色が濃い個体。カスリテナガエビと酷似しているが、頭胸甲側面に絣模様がないため、ネッタイテナガエビと同定できる。

f:id:ebina-1:20210511204627j:plain
八重山列島産の個体(雌)
撮影が長引き、色が薄まってきた個体。このような個体はヒラテテナガエビのような体色になるので、鉗脚が欠落していると同定に悩むことがある。
抱いている卵は多くのテナガエビ類と同様に緑色である。

f:id:ebina-1:20210511212139j:plain
沖縄島産の未成体

経験上、沖縄島ではこのような小型個体をよく目にする。
本種はヒラテテナガエビと異なり、頭胸甲側面の縦縞の色が赤っぽいことが多い。

f:id:ebina-1:20210511212724j:plain
沖縄島産の幼体 同行者採集

赤と青のグラデーションのようになっている個体。
非常に美しいが、頭胸甲側面の模様などから本種と同定される。

f:id:ebina-1:20210511204853j:plain
八重山列島産の幼体

体長15㎜未満の個体であるが、色彩ははっきりとしており容易に同定することができる。幼体を同定する際には、色彩が最も有効であるため色落ちする前に撮影するのが良い。

f:id:ebina-1:20210511213737j:plain
沖縄島産の未成体

ケースを忘れたため水中で撮影した個体。
頭胸甲後部に緑色の卵巣が見えるため、おそらく雌の個体。
この大きさでも抱卵できると推測される。

f:id:ebina-1:20201220023854j:plain
八重山列島産の個体(雌)
色が薄い雌の個体はヒラテテナガエビとの区別が凄まじく難しい。
有識者の方に同定していただいた結果、第3腹節の横縞が腹側まで伸長している点から本種であるらしい。

筆者が独自に調査を行った結果、眼窩後縁から最も後ろの鋸歯の基部までの長さ / 頭胸甲長の値を用いてある程度の同定は可能であるという結論に至った。
まだサンプル数が少ないのでズレがあるが、ネッタイテナガエビは0.45程度、ヒラテテナガエビは0.38程度という結果が得られている。

こちらに関しては筆者がネタ半分で研究を進めているので、ちゃんとした結果がわかり次第、こちらのブログでも紹介する予定です。

 

CSPLホームに戻る

 

参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・佐伯智史・前田健・成瀬貫, 2018. 琉球列島産ネッタイテナガエビ種群3種 (甲殻亜門: 十脚目: コエビ下目: テナガエビ科)の分類と形態. Fauna Ryukyuana 44: 33–53.
・佐伯智史, 2017. カスリテナガエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅の恐れのある野生生物 第3版(動物編)ー レッドデータおきなわ ー. Pp. 313, 沖縄県環境部自然保護課, 那覇市.
・讃岐斉, 渡邊卓実, 大富潤, 駒井智幸, 2019. 鹿児島県口永良部島から得られたネッタイテナガエビ Macrobrachium placidulum(十脚目: コエビ下目: テナガエビ科)の北限記録, 日本生物地理学会会報(74): 100-106.