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エビ好き大学生による淡水エビ布教ブログ

コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

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コンジンテナガエビ Macrobrachium lar  (Fabricius, 1798)
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

琉球列島で最も優占している最大体長150mmにも達する大型のテナガエビ
死滅回遊で本州にやってくることが知られているが、おそらく温排水の影響を受ける水域では死滅せず、再生産を行っていると考えられる。

 

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額角は鈍いヤリ状で、歯式は 2+5-7/2-4 と、テナガエビ類の中では上縁歯数が少ない類である。小型個体は、この特徴を用いて同定することができる。(ただし、幼体は頭胸甲上に1歯しかない。)

成体の体色は、上の写真のような個体がほとんどで、黒く長いはさみ脚が特徴的である。
長い鉗脚を持っているにもかかわらず、遡上力は凄まじい落差50m以上の滝上でも確認することができた。
そのため、河川中下流域から最上流域までいたるところで確認することができる。

 

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若い雄の個体。
特徴的なはさみの形状になっていないが、額角歯式で同定することができる。
また、若い個体は全体的に薄い茶褐色になる印象である。

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八重山列島産の成体雌。
気にしたことが無かったが、雌の個体は色が薄いのかもしれない。
はさみの先端は黒っぽくなるが、オレンジ色の模様があるのも特徴である。

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奄美群島で採集された個体

沖縄島以南では個体数が多い印象であるが、奄美群島の河川では個体数は少ない印象を受けた。
一方で、山道の側溝でたくさん生息していたため、もしかしたら特殊な環境で優占しているのかもしれない。

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奄美群島で採集された雄の個体

この個体は地下水脈で採集された。
白濁りとは異なり、地下で採集された個体は体色が白いことが多い。
この水域では複数個体確認されたため、地下水系にも普通に侵入してくるとされる。

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東海地方産の雌の個体
上述で雌の個体は色が薄いかもしれないとしたが、そんなことはなかった。
成体と言うにはまだ若い個体だが、体色は全体が濃い褐色である。

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東海地方産の幼体
成体に比べると黒い色素胞の数が少なく、全体的に薄い体色である。
この大きさでも比較的額角上縁の鋸歯は大きく、肉眼でも数えられる。

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東海地方産の幼体
この大きさの個体に多いが、頭胸甲側面に3本の斜横線が見られることがあるので、ミナミテナガエビ等との誤同定に注意したい。

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関東産の1㎝未満の個体。
慣れないとテナガエビかどうかも判別するのが難しいかもしれないが、慣れれば額角歯式を見るだけである程度同定することが可能となる。
ただ、この固体はコンジンテナガエビの可能性が高いが、コツノテナガエビの可能性もある。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 2017. 神奈川県および伊豆半島の河川から採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種. 神奈川自然史資料 (38): 29 - 35.
・吉郷英範, 2002. 日本のテナガエビ属(甲殻類:十脚類:テナガエビ科). 比婆科学 206: 1-17.