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エビ好き大学生による淡水エビ布教ブログ

チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis

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チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis  (Sollaud, 1911)
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>スジエビ

南は九州、北は宮城県まで記録がある外来のスジエビ
1969年以降から、「シラサエビ」として中国・韓国から釣り餌用に輸入されていた。
現在は、検疫の関係で生きた状態での輸入は行われていないとされる。

日本の多くのスジエビ類とは異なり、純淡水性の生活史を持つ。
分散力が低いため、分布は広いが散在的である。

形態的にスジエビ Palaemon paucidens に酷似しているが、頭胸甲側面の模様で識別することが可能である。
加えて、眼柄と眼の比率や大顎の触髭の有無、尾節末端の形状で判別できるとされるが、それぞれの形態的特徴を総合的に判断する必要がある。
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額角歯式は 0-2+2-6/0-3 で、額角先端に歯が無いのが特徴である。
しかし筆者は、額角先端に鋸歯を持つ個体も確認している。
(ただし、スジエビほど先端寄りではない)

 

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本種はスジエビよりも眼が小さい傾向にある。
文献によると尾節先端は尖るというが、怪しい。少なくとも、デジタルカメラで撮影した限りではスジエビ(Aタイプ)との明瞭な差異は確認できなかった。

 

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神奈川県産の個体
頭胸甲側面の3本の斜横線のうち、最後方の線の上部がフック状に曲がる点がもっとも一般的な識別方法である。
スジエビに比べて、体色が全体的に白っぽい点も識別の際に有効である。

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東京都の池で採集された個体
フック状の斜横線がわかりにくいこともある。
経験則ではあるが、スジエビの「\ /」模様に対して、本種は「\l/」という模様になることが多い。

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東京都の池で採集された個体
これも経験則だが、スジ模様が赤褐色になる傾向があるように感じる。
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上の個体の額角
余談だが、この固体は若干ではあるが額角先端に鋸歯を持っていた。


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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・斉藤英俊, 2017. 外来釣り餌動物チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis の流通に及ぼす新輸入防疫制度の影響. 日本水産学会誌.
・斉藤英俊, 鬼村直生, 米谷公宏, 清水織裕, 小林薫平, 児玉敦也, 河合幸一郎, 2018. 外来釣り餌動物チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis の出現状況. 広島大学総合博物館研究報告 Bulletin of the Hiroshima University Museum 9: 33-39.
・内田大貴, 石塚隆寛, 加納光樹, 増子勝男, 池澤広美, 土屋勝, 2018. 茨城県菅生沼において採集された外来魚3種と外来エビ1種. 茨城県自然博物館研究報告(21): 149-153.
・長谷川政智, 森晃, 藤本泰文, 2016. 淡水エビのスジエビ Palaemon paucidens に酷似した外来淡水エビ Palaemon sinensis の宮城県における初確認. 伊豆沼・内沼研究報告 10巻, pp. 59-66.