Crazy Shrimp

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ザラテテナガエビ Macrobrachium australe

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ザラテテナガエビ Macrobrachium australe
十脚目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

南西諸島から長崎県および関東まで記録のあるテナガエビ属の1種。
日本海側では島根県からの記録があるが、これは誤同定である可能性が高いという。
そのため、対馬海流による分散の東限は長崎県までである。

体長は最大で85㎜程度テナガエビ類として標準的な体長である。
しかし、経験上、大型個体はめったに見られない。

本種は鉗脚が細い円筒形テナガエビ類であるが、同時に大鉗脚と小鉗脚の形態が大きく異なるという日本では珍しい種である。
大型雄の大鉗脚は非常に長く伸長する一方で、小鉗脚は短く、掌部に軟毛が密生する。
また、両鉗脚のすべての節が小棘が覆われており、この特徴が和名の由来「ザラザラした手=ザラテ」となっていると考えられる。

余談だが、種小名「australe」は、南の という意味があり、学名に基づいて和名を提唱すると、ミナミテナガエビになってしまうため、ザラテという不思議な和名がつけられたと推測される。

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額角歯式は 2-4+5-10/2-8 で、額角下縁歯数の幅が非常に広い。
額角は細く長いヤリ状で、スベスベテナガエビに類似している。
特に幼体の額角は上方への湾曲が著しく、同定がしやすい(上写真)。
しかし成長するにつれて、湾曲は緩くなる傾向にあり、成体ではテナガエビのような額角の形状になってしまうこともある。

本種やスベスベテナガエビのような額角を有するテナガエビ類は、胸脚やその指節が細長く、汽水域や下流域の淵などの流れが緩やかな環境に生息する種に共通する特徴である。
ただし、本種は比較的中流域でも見られることも多い。

体色は薄い褐色の地に、赤紫色の小斑が全体に見られる。
また、頭胸甲側面には斑と同じ色の3本の平行な斜横線が見られ、ミナミテナガエビのようなm字にはならない。

 

本種には、形態的に酷似(筆者も違いがわかりません)しているナンヨウテナガエビ M.ustulatumという種がいる。こちらは、本種のジュニアシノニムとされていたが、2017年にシノニム復活という形で再記載された。
また、和名がついていることからもわかるように、日本では2015年に沖縄島で1個体採集されている。

このため、ザラテテナガエビを採集しても一概に本種であると断言できないのが現状である。少なくとも、小型個体に関しては内部形態や塩基配列でも見ない限り同定できないだろう。

そのため今回は、ナンヨウテナガエビの日本からの正式な記録は1個体のみであることを踏まえて、両者を区別していない場合でも便宜的にザラテテナガエビとして紹介したい。

 

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沖縄島で採集された未成体

ミゾレヌマエビのように第3腹節が隆起したような体形をしているが、このような形態のコエビ類は、河川の淵のような流れのゆるい環境を好む傾向があると感じる。

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東海地方で採集された雌の個体

雌の個体は腹節側面腹側に複雑な模様を呈する
このような特徴は、他のテナガエビ類にもしばしばみられるため、卵を保護などにおいて何かしら利点があると考えられる。

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東海地方で採集された未成体

紹介し忘れたが、本種の第2胸脚の基部は暗色に染まる
また、頭胸甲側面の斜横線は赤みが強い傾向がある。

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東海地方で採集された未成体

上の個体らよりも体長が小さな個体であるためか、額角が非常に長く上方に湾曲している。加えて、頭胸甲側面の3本線の色からも同定は容易である。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・丸山智朗, 2017. 神奈川県および伊豆半島の河川から採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種. 神奈川自然史資料 (38): 29 - 35.
・北野忠, 寺田一美, 2015. 金目川で採集された神奈川県初記録のザラテテナガエビ神奈川自然史資料 (36): 39 - 40.
今井正, 中曽雅之, 2019. 長崎市神浦川におけるザラテテナガエビの記録. 水生動物 第2019巻.