こんにちは、Crazy Shrimp 管理人のebina です。
今回は、関東のエビを見分けるための記事です!!
「淡水エビを採集したけど、種類がわからない」
とお悩みの全国(関東)の皆様、ぜひ活用してください。
ただし、今回は熱帯性コエビ類や汽水性エビ類は取り扱いません!!
(ごめんなさい、いつか別の記事で紹介させていただきます)
▼先に読んでほしい記事▼
1.はじめに
皆さんは、わからない生物をどのように調べますか?
多分、捕まえた生物と図鑑などの写真と比べて
「色や形が一番似ているもの」というのを探すと思います。
これは、絵合わせ同定と呼ばれるもので、最も一般的で簡単な方法です。
では、この写真の中で1匹だけ違う種類のエビがいます。
色や形から判断してみてください(答えは下)
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答え
3
実はこの問題、Twitterで100人以上の人に回答していただいたところ
正解率は43%で、過半数が不正解でした。
つまり...
ただ写真を見比べるだけでは識別できない
ということです。
特に、体色での区別はNGです。
初心者は絶対に体色で区別しない方が良い
淡水エビを識別するポイントは3つ
- 体のかたち
- トゲやギザギザの有無
- 特別な模様
これを念頭にいれて、記事を読んでみてください~
2.淡水エビに関する基礎知識
淡水エビを同定するうえで、知っておくべきポイント2つ
1.淡水エビの分類
2.淡水エビの各部名称
これを少し知っているだけで、簡単に区別できるようになります。
2-1.淡水エビの分類
関東で普通に採集される淡水エビはこんな感じの分類となっています。
「いや、だから何だよ(# ゚Д゚)」
とお思いの方も、どうか怒りを鎮めてください。
ここで言いたいのは
テナガエビ系とヌマエビ系の2種類しかないってことです。
(上:テナガエビ系 下:ヌマエビ系)
この2分類は、はさみ脚が長いか否かで区別できます。
写真を見てもらえば一目瞭然ですね👍
それでは、おさらいということで
以下の4匹をテナガエビ系とヌマエビ系でわけてみてください。
▼答えは下へスクロール▼
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▶答え
テナガエビ系:2,3
ヌマエビ系 :1,4
思ったより難しかったかもしれませんが
2と3は、はさみ脚が少し長いのでテナガエビ系です。
では、この2系統が区別できるという前提で進みます
2-2.淡水エビの各部名称
ぶっちゃけ、名前は覚える必要ないです!
しかし、名前がないと説明できないので紹介します
ざっくり説明するならば
額角=エビの角
尾扇=エビの尻尾
頭胸甲=エビの頭
腹節=エビの殻
ということです(´・ω・`) あんまりいい表現じゃないけど...
それでは、頭に注目します~
前の写真で気づいたかもしれませんが
エビの角の上と下にはギザギザがあるのです。
上縁歯=角の上側のギザギザ
下縁歯=角の下側のギザギザ
頭胸甲上の歯=上縁歯のうち、眼よりも後ろのギザギザ
前側角は、マル印のことです。
種によってはここにトゲがある。
実は... 淡水エビって
「ギザギザを数えないと同定できません」
...というのは嘘です~( ´∀` )
こんな細かいのいちいち数えてたストレスでエビを食べられなくなります。
同定に必要なのは
- ギザギザの、有 or 無し
- ギザギザが、いっぱい or 少ない
- ギザギザの、配列パターン
だけです。難しそうに聞こえますが、やれば簡単ですよ。
ここまで飛ばさずに読んだなら、完璧です!
それでは、さっそく同定に移っていきましょう。
3.テナガエビ科の同定
テナガエビ科って覚えてますか?
上の写真のこの部分のエビたちです~
なんか、変な〇がついてますけど...
はい。丸がついてるのは区別が難しいです( ゚Д゚)
とりあえず、テナガエビ属3種を比べてみましょう。
3-1.テナガエビ属の同定
テナガエビ属の特徴は、はさみがすごく長い点です。ただし、雌の個体はそこまで大きなはさみを持たないので以下のポイントを押さえておきましょう。
見ての通り、ヒラテテナガエビだけ明らかに違います。
- はさみ脚が太い
- 頭胸甲側面に縦縞or網目模様
- 第3腹節背面に暗色の帯
- 河川中・上流域に生息
見ての通り、言われなければ気づかない程度の違いしかないんです。
また、どの特徴も個体差があるのでわかりづらいこともあります。
なので、これらの特徴を総合的に判断する必要があります。
右上に生息流域を書いたのですが
に生息することが多いです。
このとき、ミナミテナガエビは
「水の抵抗を減らすために爪や額角を短くした」
というイメージを持っておくと覚えやすいです。
3-2.スジエビ属の同定
スジエビ属の特徴は3つ!!
- テナガエビ属よりもはさみ脚が短い
- 体色が透明
- 体に筋模様が入る
2~3回見れば、すぐにスジエビ属までは同定できます。属の判別までは...ね。
腹節の縞模様は共通の特徴です。
また、頭胸甲側面に「ハ」を逆にした模様が見られるのも共通ですが、写真に記したような違いが見られることが多いです。
経験則ですが、チュウゴクスジエビは、ハの間に1本薄く線が見えることがあるので、その点でも同定することができます。
また、額角に注目するとこのような違いがあります。
ただし、稀に先端部に上縁歯を持たないスジエビもいるので、色彩的特徴と合わせて総合的に判断する必要があります。
4.ヌマエビ科の同定
ここまででお腹いっぱいという人もいると思いますが、ヌマエビ類を忘れちゃいけませんね。忘れている方のためにも、ヌマエビ科の説明をもう1度。
同じ色の丸がついている種は形態的に似ています。
ほとんど似てるじゃないですかと思うかもしれませんが、テナガエビ科と比べたらはるかに同定しやすいです。
それでは、ヌマエビ属から紹介していきます~
4-1.ヌマエビ属の同定
皆さん、冒頭の図を見たときに
ヌマエビ属だけ早々に分岐していることに気づきました?
この図に記述したように、他の2属はヒメヌマエビ亜科に分類されるのに対し、ヌマエビ属だけヌマエビ亜科に分類されるのです。
つまり、ヌマエビ属は特殊なエビなのです。
具体的には
- 眼の上に棘がある
- 胸脚にピロピロした突起(外肢)がある
- 世界的に珍しい
というような特徴があります。
世界的に珍しいのはさておき、実物がこれです。
ちょっとわかりづらいかもしれませんね(;^_^A
ヌマエビ属はマル印のところに棘があるので
属の判別がわからないときは、これを見るのがおすすめ。
ちなみに、胸脚のピロピロの突起(外肢)はこんな感じです。赤く囲った突起は、この属の特徴となります。
しかしながら、この外肢は観察しにくいので、眼窩上棘で判断することをおすすめします。
属レベルの識別点を学んだので、ヌマエビ属の2種を同定しましょう。
どちらも体形が似ているので、以下のポイントを要チェックです。
2種の共通の特徴は
- 額角が長い点
- 腰が曲がっている点
写真のような体色が出ている雌の個体はわかりづらいですが
ヌマエビの体色は透明感が強く、頭胸甲側面の斑点が目立つのでぱっと見でも区別できる場合が多いです。
また、額角を見ると確実に識別することが可能です。
写真の通り、ヌマエビの上縁歯は明瞭で個数も多いのが特徴。
逆にヌカエビの鋸歯は小さく少ないので
肉眼だとほとんど見えません。
4-2.ヒメヌマエビ属とカワリヌマエビ属
ヌマエビ属は特殊なヌマエビなら
一般的なヌマエビ=ヒメヌマエビ属です。
そして、ヒメヌマエビ属の中の変わり者がカワリヌマエビ属となります。
ということで、ヒメヌマエビ属とカワリヌマエビ属の違いから見ていきます。
- カワリヌマエビ属は大きな卵
- カワリヌマエビ属は前側角棘を持つ
(前側角がわからない場合は、目次の2-2をチェック)
ちなみに、関東のカワリヌマエビ属は
外来のカワリヌマエビ属の1種(シナヌマエビ)だけ。
つまり!!
前側角棘がある=カワリヌマエビ属の1種と同定することができます!!
知ってる人は、勝ち組ですね(≧▽≦)
属ごとの特徴がわかったところで、全種の大まかな特徴を見てみましょう。
これらの中だと、ミゾレヌマエビは明らかに形が違うのですぐにわかると思います。
また、ヤマトヌマエビは独特な模様なので迷うことはないでしょう。
「んー、他のエビの違いが...」って感じるかもしれませんが、大丈夫です。
こいつらを100%区別できる切り札があります!!
それが、額角のギザギザです!!とりあえず、見てください<(_ _)>
トゲナシヌマエビは、名前の通りトゲがないのが特徴。
ヒメヌマエビとカワリヌマエビ属の1種は、ぱっと見似てます。
が、写真のように2つの識別ポイントがあるので、間違えることはありません。
ちなみに、ミゾレヌマエビとヤマトヌマエビの額角はこんな感じです。
ミゾレヌマエビの鋸歯の配列は特徴的で、ヌマエビやヌカエビとの識別に有効です。
5.まとめ
どうでしょう?
何となく区別できるようになりましたか?
せっかくなので、2章で紹介した写真を再掲します。
同定できますか??(答えは一番下で紹介)
今回は12種まとめて紹介しているので、完全には把握しきれなかったと思います。
正直なところ、採集した川エビを見分けるには
実際に採集して観察する。
そして、淡水エビに慣れることが一番です。
例えばの話ですが
「〇〇坂46 写真でわかる見分け方!!」
という記事を見て、アイドルの顔を覚えます??
違いますよね(笑)
MVやTVを見ていると自然と覚えます。
これは、人だけでなくエビも同じです。
この記事を読んで、少しでも淡水エビに興味が沸いたら、ぜひ近所の水辺で川エビを捕まえて、エビという生き物に慣れてみてください♪
生き物屋の皆様、今後ともどうぞよろしくお願いします。
▼詳細なエビ図鑑記事はこちら▼
▼これまでの記事一覧はこちら▼
参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・鈴木廣志, 成瀬貫, 2011. エビ・カニ・ザリガニ 淡水甲殻類の保全と生物学 1.3 日本の淡水産甲殻十脚類 p39-73. 生物研究社. 東京.
答え
1:トゲナシヌマエビ
2:ヒラテテナガエビ
3:スジエビ
4:ミゾレヌマエビ