Crazy Shrimp

Crazy Shrimp is not as crazy as it sounds, but sometimes lazily and sometimes intensively, collects, researches and observes not just Japanese freshwater shrimps and prawns, but also saltwater shrimps, fish and many other aquatic creatures.

ザラテテナガエビ Macrobrachium australe

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ザラテテナガエビ Macrobrachium australe
十脚目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

南西諸島から長崎県および関東まで記録のあるテナガエビ属の1種。
日本海側では島根県からの記録があるが、これは誤同定である可能性が高いという。
そのため、対馬海流による分散の東限は長崎県までである。

体長は最大で85㎜程度テナガエビ類として標準的な体長である。
しかし、経験上、大型個体はめったに見られない。

本種は鉗脚が細い円筒形テナガエビ類であるが、同時に大鉗脚と小鉗脚の形態が大きく異なるという日本では珍しい種である。
大型雄の大鉗脚は非常に長く伸長する一方で、小鉗脚は短く、掌部に軟毛が密生する。
また、両鉗脚のすべての節が小棘が覆われており、この特徴が和名の由来「ザラザラした手=ザラテ」となっていると考えられる。

余談だが、種小名「australe」は、南の という意味があり、学名に基づいて和名を提唱すると、ミナミテナガエビになってしまうため、ザラテという不思議な和名がつけられたと推測される。

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額角歯式は 2-4+5-10/2-8 で、額角下縁歯数の幅が非常に広い。
額角は細く長いヤリ状で、スベスベテナガエビに類似している。
特に幼体の額角は上方への湾曲が著しく、同定がしやすい(上写真)。
しかし成長するにつれて、湾曲は緩くなる傾向にあり、成体ではテナガエビのような額角の形状になってしまうこともある。

本種やスベスベテナガエビのような額角を有するテナガエビ類は、胸脚やその指節が細長く、汽水域や下流域の淵などの流れが緩やかな環境に生息する種に共通する特徴である。
ただし、本種は比較的中流域でも見られることも多い。

体色は薄い褐色の地に、赤紫色の小斑が全体に見られる。
また、頭胸甲側面には斑と同じ色の3本の平行な斜横線が見られ、ミナミテナガエビのようなm字にはならない。

 

本種には、形態的に酷似(筆者も違いがわかりません)しているナンヨウテナガエビ M.ustulatumという種がいる。こちらは、本種のジュニアシノニムとされていたが、2017年にシノニム復活という形で再記載された。
また、和名がついていることからもわかるように、日本では2015年に沖縄島で1個体採集されている。

このため、ザラテテナガエビを採集しても一概に本種であると断言できないのが現状である。少なくとも、小型個体に関しては内部形態や塩基配列でも見ない限り同定できないだろう。

そのため今回は、ナンヨウテナガエビの日本からの正式な記録は1個体のみであることを踏まえて、両者を区別していない場合でも便宜的にザラテテナガエビとして紹介したい。

 

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沖縄島で採集された未成体

ミゾレヌマエビのように第3腹節が隆起したような体形をしているが、このような形態のコエビ類は、河川の淵のような流れのゆるい環境を好む傾向があると感じる。

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東海地方で採集された雌の個体

雌の個体は腹節側面腹側に複雑な模様を呈する
このような特徴は、他のテナガエビ類にもしばしばみられるため、卵を保護などにおいて何かしら利点があると考えられる。

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東海地方で採集された未成体

紹介し忘れたが、本種の第2胸脚の基部は暗色に染まる
また、頭胸甲側面の斜横線は赤みが強い傾向がある。

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東海地方で採集された未成体

上の個体らよりも体長が小さな個体であるためか、額角が非常に長く上方に湾曲している。加えて、頭胸甲側面の3本線の色からも同定は容易である。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・丸山智朗, 2017. 神奈川県および伊豆半島の河川から採集された注目すべき熱帯性コエビ類5種. 神奈川自然史資料 (38): 29 - 35.
・北野忠, 寺田一美, 2015. 金目川で採集された神奈川県初記録のザラテテナガエビ神奈川自然史資料 (36): 39 - 40.
今井正, 中曽雅之, 2019. 長崎市神浦川におけるザラテテナガエビの記録. 水生動物 第2019巻.



カスリテナガエビ Macrobrachium sp.

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カスリテナガエビ Macrobrachium sp.
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

日本に生息する未記載テナガエビ類2種のうちの1種である(もう1種はチュラテナガエビ)。
体長は50㎜程度と、チュラテナガエビに次いで小型な種である。

分布は複数の文献で沖縄島と石垣島となっているが、筆者は西表島でも採集したことがあるため、実際にはもっと広い範囲で生息していると考えられる。
また、国外ではフィリピンからの記録がある。

レッドデータおきなわでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、個体数は少ないと明記されている。
筆者の経験上、一部の水域での個体数は少なくないが、他の水域ではほとんど見ることができない。

本種は、ネッタイテナガエビ種群と呼ばれるクレードに含まれており、その中でもカスリテナガエビネッタイテナガエビ、マガタマテナガエビ形態的に類似している。

しかし本種は生時の色彩において、他の2種のように頭胸甲側面に赤褐色の3本の縦縞を持たず、絣模様(金や白色の斑)を呈するという点で容易に識別できる
個人的には、むしろ体長が類似しているチュラテナガエビの方が混同しやすいと感じている。

体色は茶褐色であることが多いが、赤褐色や青緑色を呈することもあり、色彩変異に富む
経験則であるが、本種の色彩変化の速度は著しく、比較的短時間で体色が変化してしまうことが多い(下で紹介する)。

 

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額角歯式は 4-6+4-7/2-3 であり、上縁歯数は11~13歯である。
額角の形状は、ネッタイテナガエビやマガタマテナガエビと酷似しているが、本種とマガタマテナガエビは第1触角柄部先端に到達するという点から、ネッタイテナガエビよりも長くなる傾向があるとされる。

本種は、2003年に日本ではじめて記録され、石垣島の標本に基づき Macrobrachium lepidactyloides と同定されたが、佐伯ら(2018)によってM.lepidactyloides には「マガタマテナガエビ」和名が提唱され、カスリテナガエビは未記載種である可能性が高いという結果になった。

しかし台湾の図鑑には、頭胸甲側面に絣模様を有する点や雄の大鉗脚の形態が酷似している毛指沼蝦 M.jaroense という種が記述されている。
佐伯ら(2018)では、カスリテナガエビM.placidum  M.feunteuni をはじめとする複数のテナガエビ類と形態比較がされているものの、M.jaroenseとの比較は行われていない。
そのため、筆者はカスリテナガエビは未記載種ではなくM.jaroenseであると憶測しているが、そもそも台湾で記録されている毛指沼蝦が誤同定である可能性も否定できないため、今後の研究による分類学的位置の再検討を期待する。

 

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石垣島で採集された雄の個体

この体色の個体を見ることが多いと感じる。
頭胸甲側面にはネッタイテナガエビなどにみられる3本線は見られず、なんとも言えないような複雑な模様を呈する。これが絣(かすり)模様らしい。

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石垣島で採集された抱卵個体(同じ個体)

採集した当初は下の赤褐色だったが、薄暗い容器に入れて放置していたら上のような緑色に変化していた。
非常に美しい色彩であるが、雄の個体でこの色彩は見たことがない。

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西表島で採集された雌の個体

上の個体と同様に赤褐色と緑褐色が混じったような色彩である。
これは採集してすぐに撮影したものだが、網に入った瞬間はもう少し赤色が強かったはずなんだが...

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石垣島で採集された雄の個体

大鉗脚が欠落している等の傷を負っていたが、かなり大型な個体。
わかりづらいが、小鉗脚の咬合面に剛毛が密生していることがわかる。

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石垣島で採集された雌の個体

撮影の時間が長引き色彩が落ちてしまった個体。
頭胸甲側面に明瞭な絣模様は見れないが、金色の斑があるので同定は難しくない。

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石垣島で採集された個体

体長25mm程度の個体だが、本種の最大体長が50㎜程度という点を考慮すると成体と言えるのかもしれない。
以前から気になっていたのだが、最大体長が小さいテナガエビ類の成長速度とコンジンテナガエビのような大型種のものにどのくらいの差異があるのだろうか。

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石垣島で採集された個体

かなり小型な個体であるが、腹節背面の複数の白帯がはっきりしていてネッタイテナガエビ種群らしさが出ている。
この大きさでも生時であれば頭胸甲側面の模様で同定は容易。

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石垣島で採集された幼体

上の個体と同様に幼体であるが、頭胸甲側面の黄色の斑や絣模様で同定が可能。
ただ、標本等にして色が抜けたらまともに同定できないだろう。

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石垣島で採集された本種と思われる幼体

かなり小型な個体で同定が難しいが、頭胸甲側面の赤褐色のラインの入り方が上2個体と類似している点からカスリテナガエビと思われる。
正直なところ、この大きさの個体が生息域外で採集されても本種であると同定できる気がしない。

 

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参考文献一覧
・佐伯智史, 2017. カスリテナガエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 313-314, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.
・佐伯智史・前田健・成瀬貫, 2018. 琉球列島産ネッタイテナガエビ種群3種 (甲殻亜門: 十脚目: コエビ下目: テナガエビ科)の分類と形態. Fauna Ryukyuana 44: 33–53.
・諸喜田茂充・藤田喜久・長井隆・伊藤茜・川原剛・野甫斉, 2003. 石垣島名蔵川マングローブ域と流入河川における甲殻類の生態分布と現存量. 亜熱帯総合研究所(編), マングローブに関する調査研究報告書. Pp.97–111, 亜熱帯総合研究所, 那覇.
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.

ショキタテナガエビ Macrobrachium shokitai

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ショキタテナガエビ Macorbrachium shokitai
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ

西表島にのみ生息する日本固有種である。
また、日本で唯一の大卵少産型テナガエビ類であり、レッドデータおきなわでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。

和名・学名は、日本の淡水エビ研究の権威、諸喜田茂充先生に献名されたものである。
余談だが、諸喜田先生の著書;「淡水産エビ類の生活史-エビの川登り-」に本種の発見に関する項があり、非常に面白いので機会があればぜひ一読してほしい。

本種は、台湾などに生息しているタイリクテナガエビM.asperulum と近縁であり、2種を同時に飼育すると容易に交雑するという。
しかし、誕生した交雑個体が生殖能力を持たないことやアロザイム分析などから明らかに別種であることがわかっている。ちなみに、本種とタイリクテナガエビ額角歯数や第2胸脚の違いなどで区別できるらしい。

そもそも本種やタイリクテナガエビの祖先は、テナガエビミナミテナガエビの祖先から種分化しており、このときに小卵多産型から大卵少産型への移行があったとされる。
また、本種とタイリクテナガエビの分化は西表島が大陸からの分裂によるものであるとされている。

このような歴史からもわかるように、本種の形態はテナガエビと類似しており、日本からの記録がある南西諸島に生息するテナガエビ類としては形態的にシンプルである。
ただし、体長は60㎜程度とやや小型である。

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額角歯式は、2+7-10/1-3 となっている。
額角の形状は、比較的幅広い木の葉型であるが、U川産の個体群は写真のように比較的先端部が上方を向くことが多いと感じる。

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筆者の浅い経験上、他の水域では先端部が上方を向く個体を見たことがないため、U川とその他水域の個体群では遺伝的な差異があるのでは?と感じている。(勝手な憶測です。根拠は一切ありません)

ただし、テナガエビ類の額角の形状は成長過程によって変化することが多いため、これらの違いは成体と未成体の違いという可能性も考えられる。

体色に関しては、幼体は薄い褐色で、成長するにつれて体色が濃くなっていく傾向がある。基本的には茶褐色であることが多いが、大型の雄では最初の写真のようにかなり濃くなる場合がある。
また、1~2%の割合で白化個体がいるというが、筆者は見たことがない。

筆者の推測であるが、イリオモテヌマエビのような大卵少産型のコエビ類には一定の割合で白化個体が見られるため、陸封種の場合、近親交配などの影響で色彩変異個体が誕生しやすいのかもしれない。

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U川で採集された個体

上述した通り、額角の先端部が上方を向いている。
言及していなかったが、頭胸甲側面に斜横線が入るのも本種の特徴らしい。
(正直なところ、多くのテナガエビ類が頭胸甲側面に斜横線を有する)

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U川以外の水域で採集された個体

上述した通り、額角は上方を向かない木の葉型である。
赤褐色の鉗脚が美しいが、大型雄の鉗脚は黒色であることが多い。

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ショキタテナガノエラヤドリに寄生された個体

言及していなかったが、本種にはショキタテナガノエラヤドリ Probopyrus iriomotensis というエビヤドリムシ類がつくことがある。
この等脚類に寄生によって、成長の遅れや繁殖力の低下などが懸念されている。

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ショキタテナガノエラヤドリに寄生された個体

寄生されているが、それなりに成長していた個体。
宿主に対応してエビヤドリムシも大きくなっていることがわかる。
ショキタテナガノエラヤドリは、名前からショキタテナガエビを特異的に宿主としていると思うかもしれないが、過去にミナミテナガエビを宿主としている例が報告されている。
ちなみに、この寄生虫はエビノコバンとは異なり、頭胸甲の内側に張り付いているため、簡単にはがすことができない。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.

・斉藤暢宏, 2011. 寄生性甲殻類の1新種, ショキタテナガノエラヤドリについて~アマチュア研究者新種記載顛末記~. Cancer 20: 39-41.
・諸喜田茂充, 成瀬貫. ショキタテナガエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 314, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.

 

ツブテナガエビ Macrobrachium gracilirostre

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ツブテナガエビ Macrobrachium gracilirostre
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ

口永良部島以南の南西諸島で記録されている美麗種で、レッドデータおきなわでは準絶滅危惧のカテゴリーに分類されている。
筆者の経験上、八重山列島では個体数は少なくないが、そのほかの地域ではあまり見ることができない。
(ただし、ネット上では沖縄島での記録をしばしば目にすることから稀ではないのかもしれない)

体長は約100㎜と、熱帯性のテナガエビの中では大型である。
体色は、赤褐色と青緑色の細い縦縞が交互に続き、日本のエビとは思えないほど美しい。
腹節背面には1本の白色の横帯V字の模様があるのが特徴である。

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台湾の図鑑では別名「V字沼蝦」と書かれていることもある。

 

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額角歯式は 5-6+3-4/2で、額角は細く短い
ちなみに種小名は、gracili = 細い rostre = 額角の という意味で、本種を記載する際にはこの形質が注目されていたと考えられる。
(なぜ、体色のほうに着目しなかったのかが謎である)

額角の形状からわかるように、河川中・上流域の早瀬環境に生息しており、ネッタイテナガエビやオニヌマエビと同所的に採集されることが多い。
正確には、ネッタイテナガエビよりも上流を好むことが多いと感じる。

しかしこの2種よりも個体数は少なく、場所によっては採集圧による影響を感じることもある。

 

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八重山列島産の雌

赤い縦縞が強く出ている個体。このような派手な体色を持っているが、特別な毒などを保有しているわけではないらしい。

 

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八重山列島産の雄

青緑色の縦縞が強く出ている個体。
他のテナガエビ属のように鉗脚が長く伸びない印象があるが、実際はかなり大きくなることがあるらしい。しかし立派な鉗脚を持つ個体はめったに見れず、この個体のような中途半端な大きさであることが多い。

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八重山列島産の雌の個体

写真だとわかりづらいが、緑色の卵を抱えている。
理由はわからないが、ザラテテナガエビネッタイテナガエビなどの熱帯性のテナガエビ類は抱卵直後の卵色が緑であることが多いように感じる。

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八重山列島産の個体(同行者採集)

あまり大きくない個体であるが、特徴的な体色は明瞭である。
(黄色っぽく見えるのは、撮影時のライトの影響です

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八重山列島産の個体(同行者採集)

全体的に赤みが強く出ている個体。腹側背面の白色帯が明瞭である。
非常に美しい色彩を持つ本種も、透明な容器などに長時間放置するとかなり色が落ちてしまうため、きれいな色彩を維持したままの撮影は時間との勝負である。

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沖縄島で採集された幼体

体長20㎜未満の幼体であるが、赤い縦縞模様が明瞭で同定は容易
余談だが、この個体が筆者がはじめて採集した本種であるが、これ以降沖縄島では本種を見ていない。

 

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参考文献一覧
豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・佐伯智史, 2018. ツブテナガエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 328, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.
・H Suzuki, N Tanigawa, T Nagatomo, E Tsuda, 1993. Distribution of freshwater caridean shrimps and prawns (Atydae and Palaemonidae) from Southern Kyushu and adjacent islands, Kagoshima Prefecture, Japan. Crustacean Research 22; 55-64.
・林春吉, 2007. 台灣淡水魚蝦生態大圖鑑(下). 天下遠見出版.

オオテナガエビ Macrobrachium grandimanus

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オオテナガエビ Macrobrachium grandimanus
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ

種子島以南の南西諸島に生息しているテナガエビ属の1種。
和名から多くの人が大型のテナガエビと思うかもしれないが、実際はテナガエビM.nipponenseよりも一回り小さく体長は60㎜程度である。

和名の由来は、雄の大鉗脚がシオマネキのように大型になる点であると推測される。
この鉗脚の掌部には剛毛が密生するが、何に使われているのかはわからない。

大鉗脚のはさみの咬合面には明瞭な2つの棘と、細かい鋸歯が均等に整列している。

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雄の小鉗脚の可動指および不動指は非常に細く、咬合面側に湾曲する。
成体になると咬合面を中心に剛毛が疎生する。

生息域は河川の下流域で、経験上、海水の影響を強く受けるような環境で多く見られるように感じる。
見た目の強烈からレアなテナガエビと感じるかもしれないが、多くの水域で個体数は少なくなく、むしろ普通種である。

 

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額角歯数は 3-4+9-11/3-4 上縁歯数は12~15である。
額角歯式が類似しているヒラアシテナガエビとの区別は、額角の形状が有効である。
本種は、比較的細いヤリ状の額角であるため、比較的幅の広いヒラアシテナガエビと区別することができる。

2001年に、台湾から形態的に酷似している近縁種, M.shaoi が記録されている
このことに関して、台湾の図鑑に掲載されているオオテナガエビ(のような種)にはM.shaoi が充てられており、M.grandimanus は掲載されていないことから、台湾に生息しているオオテナガエビ類はすべてM.shaoi に該当すると推測される。
ちなみに、M.grandimanus1840年ハワイ諸島で採集された標本もとに記載されているが、琉球の個体群はハワイの個体群よりも上縁歯数が少ないという報告もあるため、もしかしたら、琉球列島の個体群はM.shaoiにあたる可能性がある。

余談だが、額角上縁歯数や生息域、大鉗脚が大型化するという点でヒラアシテナガエビと類似しているが、系統的にはかなり離れているという。

 

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沖縄島で採集された雄

かなり大型な個体で、大鉗脚が体長よりも大きくなっている。
腹節背面には白色の独特な模様があり、美しい。
色彩も美しく形態的にもインパクトがあるテナガエビ類であるが、個人的に知名度が低いと感じる。

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沖縄島で採集された雄の個体

大鉗脚指節は地色と黒色のまだら模様になっており、掌部は赤褐色の2本線がでる。
紹介し忘れたが、本種の腹節側面にはマガタマテナガエビのように赤色の1本線が入るのが特徴となっている。(マガタマよりも不明瞭であることが多い)

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沖縄島で採集された雄の個体

ここまで大きい個体は極めて稀である。
頭胸甲側面に3本の斜横線が入るのが特徴だが、鉗脚が大きすぎて見えない...

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沖縄島で採集された抱卵個体

雌の個体としてはかなり鉗脚が大きい個体。
多くの熱帯性テナガエビ類と同様に、卵の色は緑色である。また、雄の個体とは異なり、腹節腹側の卵を覆っている部分には模様が出ており、卵を保護する点で何らかの利点があるのかもしれない。

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沖縄島で採集された幼体

この大きさの個体は、頭胸甲側面の斜横線鉗脚の節に見られる黄斑などからミナミテナガエビの幼体と酷似していると感じる。
識別法としては、以下の3つがあげられる。
1.頭胸甲側面の3本の斜横線のうち、中央の線が他の線と並行ではなく「 / \ / 」のような模様になる点
2.腹節側面に赤褐色の1本線が出る点
3.額角が細長く、上方に大きく湾曲する点

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沖縄島で採集された本種と思われる幼体

この大きさだと同定が難しいが、頭胸甲側面の3本の斜横線の形状や額角の雰囲気からオオテナガエビと考えられる。
内地での本種の無効分散の報告が現時点でないのは、幼体の同定の難しさが1つの要因となっているのかもしれない。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・吉郷英範, 2002. 日本のテナガエビ属(甲殻類:十脚類:テナガエビ科). 比婆科学 206: 1-17.
・周名泰, 高瑞卿, 張瑞宗, 廖竣, 2020. 台灣淡水及河口魚蝦圖鑑. 台灣自然圖鑑 048. 晨星出版社.
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
・Liu, M. Y., Cai. & Tzeng, C.-S., 2007. Molecular systematics of the freshwater prawn genus Macrobrachium Bate, 1868(Crustcea: Decapoda: Palaemonidae) inferred from mtDNA sequences, with emphasis on east Asian species. Zoological Studies, 46: 272-289.

サキシマヌマエビ Caridina prashadi

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サキシマヌマエビ Caridina prashadi
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

トカラ諸島の中之島以南から記録されている体長30㎜程度のヌマエビ類で、レッドデータおきなわで準絶滅危惧種に指定されている。
また宮古市保全鹿児島県で指定希少野生動植物および天然記念物に選定されているなど、なぜか採集が規制されている地域が多い。

経験上、先島諸島の一部の水域では優占しているが、沖縄島などではほとんど見ることができない稀種である。

生息環境は、河川上流域の淵や湧水といったような環境で、洞窟内にも生息するという少し変わったニッチを持つ
そのため普段はなかなか見ることができないが、変な環境で優占していることがある。

形態は、トゲナシヌマエビよりもずんぐりとしている印象で可愛らしい。

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体色は、写真のように透明な地に暗青色の明瞭な横縞が複数出る。
基本的な縞模様の位置は決まっているが、太さや本数などに個体差がある

この横縞模様は、短時間透明な容器に入れていても消滅することはないが、長期間放置すると不明瞭になる場合もある。

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額角歯式は 0+1-6/3-6 で、鋸歯の大きさには変異が見られる
写真のように明瞭な鋸歯を持つこともあれば、顕微鏡でないと確認できないような微小な鋸歯を持つこともある。
額角は写真のように比較的短く、第1触角柄部第2節の中間に達する。

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沖縄島で採集された個体

この模様の入り方がベーシックである。
頭胸甲に2つの横縞、第3腹節に大きな横縞、腹節側面に小さな縦線。

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沖縄島で採集された個体(友人からの提供)

採集後3日以上は経過しているが、体側の模様は明瞭である。
腹節腹側に見られるピンク色のラインや腹節・頭胸甲に見られる金色の斑が非常に美しい個体である。
しかし長期間飼育したところ、縞模様は徐々に細くなってしまった。

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石垣島で採集された個体

黒色の横縞模様が細い個体。
第6腹節の腸管が青くなっているが、本種によくみられる特徴である。

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石垣島で採集された個体

上の個体と同所的に採集されたが、模様の入り方が全く違う。
この個体はかなり縞模様が太く、たくさん見られ、非常に美しい。
飼育下でこのような体色を維持するのは難しいと考えられる。

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石垣島で採集された個体

この個体も上の個体のように横縞が太く、美しい個体である。
2個体を比べてみると、模様の入り方が異なることがわかる。

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石垣島で採集された個体

この個体は、腹節腹側の黒斑が目立つ個体である。
腹節腹側の模様は雌の個体で明瞭になることが多いように感じる。

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西表島で採集された個体

この個体が採集された水域では本種が優占していたが、ほとんどの個体で縞模様が薄かったため、縞模様は環境によっても変化するのかもしれない。
余談だが、西表島の個体群はその他の地域のC.prashadiとは尾節背面の小棘の数が異なり、以前和名が充てられていたC.rapaensisと一致するらしい。

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与那国島で採集された個体

この個体は縞模様が非常に薄く、体色が青みを帯びている珍しい色彩であった。
ちなみに、現在は本種の学名はC.prashadiとなっているが、日本ではじめて記録された際には、C.sakishimensisという学名で記載された(現在はジュニアシノニムとなっている)。C.sakishimensisのタイプ産地は与那国島であり、与那国島はサキシマヌマエビの聖地と言っても過言ではないだろう。。

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与那国島で採集された個体

西表島の水域と同様に個体数は少なくなかったが、体側の縞模様が細い個体が多かった。もしかしたら、個体数が多い水域では模様が細くなりやすいのかもしれない。

 

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参考文献一覧
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・T Fujino, S Shokita, 1975. Report on Some New Atyid Shrimps(Crustcea, Decapoda, Caridea) from the Ryukyu Islands. Bulletin of Science & Engineering Division, University of Ryukyus. Mathematics & natural science(18): 93-113.
・佐伯智史, 2018. サキシマヌマエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 327, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.
・鈴木廣志, 成瀬貫, 2011. エビ・カニ・ザリガニ 淡水甲殻類保全と生物学 1.3 日本の淡水産甲殻十脚類 p39-73. 生物研究社. 東京.
・成瀬貫, 2009. 琉球大学資料館(風樹館)収蔵資料目録 第1号:琉球大学資料館(風樹館)収蔵タイプ標本目録(1); 69.
・鈴木廣志, 柴田慧菜, 石走和義, 2012. 鹿児島県与論島における陸水産エビ類の生息状況. Nature of Kagoshima 38; p91-98.
・藤田喜久, 2007. 宮古の湧水に生息する十脚甲殻類. 宮古市総合博物館紀要第11号. 
・鹿児島県ホームページ, 指定希少野生動植物の指定について http://www.pref.kagoshima.jp/ad04/kurashi-kankyo/kankyo/yasei/zyorei/03007006.html

宮古島市ホームページ, 宮古島市自然環境保全条例で指定された保全種の指定について, 宮古島市自然環境保全条例保全種一覧, 保全種(動物)一覧.https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/shityo/seikatukankyou/eisei/oshirase/files/hozensyu-doubutsu.pdf



 

ミナミオニヌマエビ Atyoida pilipes

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ミナミオニヌマエビ Atyoida pilipes
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ミナミオニヌマエビ属

口永良部島以南の南西諸島や小笠原諸島から記録されているヌマエビ類。
和名にオニヌマエビとつくことから大型なヌマエビであると思うかもしれないが、体長は36㎜程度トゲナシヌマエビとほとんど同じ大きさである。

環境省レッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているが、八重山列島の一部の水域での個体数は少なくなく、むしろ優占していることもある。
ただし、そのほかの地域ではあまり見ることができない稀種である。

 

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オニヌマエビと同様に、第1・2胸脚のはさみに長い剛毛を有し、剛毛を網のように広げることにで上流域から流れてくる浮遊物を摂食している。
(しかし飼育した経験上、オニヌマエビほど剛毛を広げた摂食を行わず、通常のヌマエビ類のようにツマツマすることも多い)

そのような生態から、河川上流域の岩や堰の壁面に流れる急流というような特殊な環境を好む(下図)。
基本的には、オニヌマエビよりも上流域で優占していることが多いが、急流のままで海にそそぐ河川では比較的下流域でも見られることがある。

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このような激流のなかで生息しているため、形態的に水の抵抗を受けにくい形になっている。

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額角は非常に短く下方に湾曲しており、急流域に適応している。
歯式は 0+0/0-3 と、写真のように下縁に歯を有することがある。
また、第1触角柄部も下方に湾曲しているため、つぶれたような顔をしている。

体色は1番上の写真のように緑色であることが多いが、環境に応じて茶褐色や白色の個体も見られるため変異に富むと考えられる。
また、体側には明瞭な黒斑の列が並ぶため、生態的に類似しているオニヌマエビとは容易に区別することができる。(むしろ、体色からヤマトヌマエビに似ていると感じる)

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本種が属するミナミオニヌマエビ属は第3顎脚先端に棘を有するという点で、オニヌマエビ属と形態的に区別することができる。

 

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沖縄島産の個体

最も基本的な体色だが、青緑色の体色が非常に美しい。
このような成体は沖縄島ではほとんど見ることができない

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沖縄島産の個体

まだ若い個体だが、体色が濃く美しい個体である。
個人的に色彩がヤマトヌマエビに似ていると感じる。

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八重山列島産の個体

上の2個体と比べて体色が薄く黄色い個体。
本種は、採集した環境によって体色が異なることが多いと感じる。

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八重山列島産の幼体

この個体は全長1~1.5㎝程度であったが、体側の模様ははっきりとしているため同定は容易である。
ちなみに、このような幼体であっても成体と同所的に採集されたため、本種は早い段階で高い遡上性を有することが推測される。

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沖縄島で採集された本種と思われるヌマエビ類

この個体は全長5㎜程度の個体であったが、形態的にミナミオニヌマエビであると推測される。
さすがにこの大きさでは明瞭は黒斑などの特徴は見られないが、採集された場所は河口から1㎞程度の中・上流域であったため、着底から間もない個体でも遡上性が高いことが推測される。

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八重山列島で観察されたミナミオニヌマエビの群集

写真がわかりづらいが、壁に張り付いているのはすべてミナミオニヌマエビである。
急流の壁面に密生している様子は壮観であるが、少し不気味である。


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参考文献一覧

豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・丸山智朗, 福家悠介, 2018. オオバヌマエビの沖縄島からの初記録. Fauna Ryukyuana, 43: 11-17.
・佐伯智史, 2018. ミナミオニヌマエビ. 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 326, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.

オオバヌマエビ Caridina macrodentata

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オオバヌマエビ Caridina macrodentata Cai&Shokita, 2006
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

石垣島西表島および沖縄島から記録されている体長22㎜程度の小型種

本種は2006年に西表島から採集された標本などに基づき記載されており、日本の地表水性のコエビ類としては比較的新しい種である。
そのため、レッドデータおきなわなどでは情報不足のカテゴリーに分類されている。

体色は、写真のように濃いことが多く、他のヌマエビ類のように透明な個体は飼育下を除いては見たことがない。グレーや黒色であることが多いが、クリーム色や赤褐色の個体も見たことがある。
また、正中線には金色や黄色の一本の縦線が入ることが多いと感じる。
加えて、尾扇後端は白色や黄色く染まることが多いため、形態的に類似しているリュウグウヒメエビとは容易に区別することができる。

生息域は一般的なヌマエビ類としては珍しく河川中・上流域の早瀬環境で、流れのゆるい沈水植物帯などでは見られない。

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額角歯式は 0-4+10-14/1-6 であり、頭胸甲上に鋸歯を持たないこともある。
また本種は、他のヌマエビ類と比べて上縁歯大きいのが特徴となっており、学名および和名の由来となっている。
額角は短く直線的であり、早瀬環境に適応した形状となっている。

しかし、本種の最大の特徴である大きな鋸歯は、幼体などでは不明瞭なことがあり、額角のみによる同定はお勧めしない。
そのような場合は本種の第5胸脚指節が双爪という点から同定するとよいと思われる。

 

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西表島で採集された雌の個体

本種は通常、体色が透明になることはないが、大型個体の方が体色が濃くなる傾向がある。この個体は比較的濃い体色で、美しい。

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西表島で採集された個体

この個体は比較的大型だが、体色はクリーム色であった。
頭胸甲側面には、リュウグウヒメエビのような雲紋が見られることあるようだ。

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石垣島で採集された抱卵個体

比較的小型な抱卵個体で体色は暗青色。正中線の黄色の線が美しい。

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石垣島で採集された抱卵個体

他のヌマエビ類ではここまで体色が濃くなるめったにないが、本種はしばしばこのような個体を目にする。ここまで暗青色が濃くても尾扇後端の黄色は明瞭である。

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石垣島で採集された抱卵個体

この個体は15㎜未満の小型個体だが、抱卵していた。
オオバヌマエビにしては体色がかなり薄く透明に近いが、尾扇の白色は明瞭である。
経験則だが、リュウグウヒメエビや本種は、トゲナシヌマエビやミゾレヌマエビなどの普通種と比べて抱卵している時期や割合が多いと感じる。

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沖縄島で採集された抱卵個体

額角をズームしなくても鋸歯が並んでいることがわかるほど大きい。
沖縄島での記録は2018年に初めて報告されたこともあり、個体数はかなり少ない。しかし、抱卵個体が採集されている点や継続的に採集されている点から定着していると考えらえる。

 

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参考文献一覧
・鈴木廣志, 成瀬貫, 2011. エビ・カニ・ザリガニ 淡水甲殻類保全と生物学 1.3 日本の淡水産甲殻十脚類 p39-73. 生物研究社. 東京.
・成瀬貫, 2018. オオバヌマエビ(新称). 沖縄県環境部自然保護課(編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編) —レッドデータおきなわ—. Pp. 347-348, 沖縄県環 境部自然保護課, 那覇市.
・丸山智朗, 福家悠介, 2018. オオバヌマエビの沖縄島からの初記録. Fauna Ryukyuana, 43: 11-17.
・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.

スジエビ Palaemon paucidens

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スジエビ Palaemon paucidens
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>スジエビ

沖縄島から北海道まで広く分布しているスジエビ属の1種。ただし、沖縄島の個体は養殖魚の移入に交じって琵琶湖などから持ち込まれたものとされている。
(日本国内の自然分布の南限は奄美大島である)
体長は最大で63㎜スジエビ属の中でも特に大型になり、中型のテナガエビに匹敵する大きさとなる。

近年、本種の研究が進んでおり、アロザイム遺伝子および18SrDNAによる分析と16SrDNAの分析によって、日本には遺伝的に異なるA~Cの3タイプが存在することが示唆されている。

 

以下、それぞれのタイプ別に簡易な紹介をする。張ら(2018a), 張ら(2018b)および張ら(2019)を参考にしている

Aタイプ = スジエビ P.paucidens
北海道から九州まで記録があり、河川から湖沼など様々な水域に生息している。卵の大きさは小卵~大卵と地域ごとに変異が見られる。100%純淡水性とは言い切れないが、成体の海水に対する耐性がBタイプよりも弱いことや浮遊幼生期間が約2週間程度と短いことから、海洋を介した分散力はほとんどないと考えられる。

Bタイプ
スジエビP.paucidensの隠蔽種である。北海道から屋久まで記録があり、河川の下流域でのみ生息が確認されており、湖沼および湖沼に流入する河川には生息していない。両側回遊性の生活史を持ち、卵はすべて中卵型で、浮遊幼生期間は約1か月である。ただし、海洋を介した分散力はあまり高くないと考えられる。本タイプは以下の2つのクレードを含む。

クレードB-1;兵庫県から北海道日本海側に加えて、宮城県牡鹿半島以北の太平洋側にも生息している。キタノスジエビはこのクレードに含まれる。

クレードB-2;宮城県牡鹿半島以南から屋久と、太平洋側に広く生息している。このクレード内には2つのサブクレード; B-2a, B-2bが含まれている。前者は神奈川県三浦半島以北(以東)に、後者は静岡県伊豆半島以南(以西)に生息している。

Cタイプ
スジエビP.paucidesの隠蔽種と考えられる。奄美大島の一部の河川にのみ少数生息している。

 


また、少なくともAとBタイプの間には強い生殖隔離が働いているとされ、交尾が行われても胚発生が初期で停止することがわかっている。
このように、スジエビのそれぞれのタイプは遺伝的に分化しており、明らかに別種であるとされているため、今回はスジエビP.paucidensにあたるAタイプのみを扱う
他2タイプは、サンプリングが完了し次第、記事を作成する予定だ。

 

上述した通り、本種は河川や湖沼、湖沼に流入する河川など様々な水域に生息している。また、流れの速い場所は好まず、沈水植物が多く流れが淀んでいる湾のような環境に群れて生息していることが多い。

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額角歯式は 1+4-7/1-3 で、多くの場合先端部に鋸歯を持つ

体色は最初の写真のように、透明な体色腹節や頭胸甲側面に黒または褐色の横縞が入り、スジエビという和名の由来になっていると考えられる。
本種の横縞模様はBタイプに比べて細く、不明瞭であることが多い。

本種は、形態的にチュウゴクスジエビと酷似しているが、頭胸甲側面の色彩で比較的容易に区別することができるほか、眼柄と眼の比率や大顎の触髭の有無、額角上縁の鋸歯の位置で判別できるとされるが、それぞれの形態的特徴を総合的に判断する必要がある。

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チュウゴクスジエビに比べて眼が大きい傾向にある
また、文献によると尾節先端は丸くなるというが、微妙である。
デジタルカメラでの撮影ではチュウゴクスジエビとの明瞭な差異は確認できなかった。

 

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関東の湿地で採集された雌の個体

わかりづらいかもしれないが、頭胸甲側面の「\ /」のような模様が本種の特徴である。
この地域の卵は比較的大きく、おそらく純淡水性であると考えらる。

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関東の河川で採集された雌の個体

体長50㎜程度の大型の雌。いかにも攻撃的に見えるが、本種は1か所に複数匹でまとまっていることが多い。
Aタイプの個体は、第2胸脚の腕節がはさみ(前節)よりも大きいという特徴がある。実際、この固体は腕節のほうが大きいが、大型個体の場合、はさみのほうが大きくなることがあるという。

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関東の河川で採集された雌の個体

Aタイプには多いことだが横縞模様が薄く、頭胸甲側面の模様も掠れている
その代わりか、全体に金色の丸い斑があり美しい。
このような斑はチュウゴクスジエビでも確認することができた。

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関東の河川で採集された個体

小型個体だと腕節>はさみが明瞭である。しかし、少なくともBタイプのクレードB-1においても幼体では腕節のほうが大きくなるとされる。f:id:ebina-1:20210202220435j:plain
上の個体の額角

額角先端に明瞭な鋸歯は見られないこともある
ただしこの個体に関してはチュウゴクスジエビとは異なり、額角先端に痕跡的な膨らみが見られることから、ある程度の識別は可能であると考えられる。

 

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 

・長谷川政智, 森晃, 藤本泰文, 2016. 淡水エビのスジエビ Palaemon paucidens に酷似した外来淡水エビ Palaemon sinensis宮城県における初確認. 伊豆沼・内沼研究報告 10巻, pp. 59-66.
・張成年, 藤尾芳久, 1986. スジエビ(Palaemon paucidens)地域集団間における幼期発生と成長の差異. 水産育種 11. 29-33.
・張成年, 今井正, 池田実, 槇宗市郎, 大貫貴清, 武藤文人, 野原健司, 古澤千春, 七里浩志, 渾川直子, 浦垣直子, 川村顕子, 市川竜也, 潮田健太郎, 樋口正仁, 手賀太郎, 児玉晃治, 伊藤雅浩, 市村政樹, 松崎浩二, 平澤桂, 戸倉渓太, 中畑勝見, 児玉紗希江, 箱山洋, 矢田崇, 丹羽健太郎, 長井敏, 柳本卓, 斉藤和敬, 中屋光裕, 丸山智朗, 2018a. スジエビPalaemon paucidensの2タイプを判別するためのDNAマーカーおよび日本における2タイプの分布. Nippon Suisan Gakkai 84(4), 674-681.
・張成年, 柳本卓, 丸山智朗, 池田実, 松谷紀明, 大貫貴清, 今井正, 2018b. スジエビPalaemon paucidensの遺伝的分化. Bull. biogeor. Coc. Japan 73. 1-16.
・張成年, 柳本卓, 小西光一, 市川卓, 小松典彦, 丸山智朗, 池田実, 野原健司, 大貫貴清, 今井正, 2019. スジエビPalaemon paucidensのBタイプにおける遺伝的分化. 水生生物 第2019巻.
・Chow, S., Yanagimoto, T., Konishi, K., Fransen, C. H. J. 2019. On the type specimen of the common freshwater shrimp Palaemon paucidens De haan, 1844 collected by Von Siebold and deposited in Naturalis Biodiversity Center. Aquat. Anim. 2019: AA2019-7.
・Chow S, Nomura T, Fujio Y. 1988. Reproductive isolation and distinct population structures in the freshwater shirimp Palaemon paucidens. Evolution; 42: 804-813.

採集日記 2020-12月号

おはようございます!ebina です。

ついに来てしまいました。12月号。。
2020年は矢のごとく過ぎ去っていきましたね( ;∀;)

さて、本題の今年最後の採集日記に入っていきたいのですが、今月はCSPLの執筆のために様々な写真を撮影してきたので、淡水エビに関しては普段より若干豪華かもしれません(やべぇ、ハードル上げちゃった...)

ということで、さっそく報告に入っていきますよ!!

▼先月号はこちら▼

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チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis

いきなり外来種からスタートするというダメっぷり...
この固体は、私の通っている東〇海〇大学内で採集されました(笑)

 

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ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense

とにかく黄色かった個体。本当によく生き残れたなぁと感じました。

 

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ヤマアカガエル

初めて見たカエルです!!
気温が低かったこともあり、ほとんど動けてませんでした(笑)
起こしちゃってごめんね (。-人-。) 

 

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フネアマガイ Septaria porcellana

知る人ぞ知るイシマキガイをも凌駕するコケ取り能力を持つ腹足類。
実は無効分散で関東にもたびたびやってきているらしい。

 

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テナガエビ Macrobrachium nipponense

あんまりちゃんとした写真を持ってなかったのでCSPL用に撮影した個体。
ちゃんと観察してみると、味わい深い体色をしています(棒)

 

ここからは2020年ラストの大物狙いで通った温〇水採集の結果です

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ルリヨシノボリ Rhinogobius sp. CO

いや、温〇水採集でいきなり温帯性の種かよ!!
とも言い切れないくらいなかなか採集できないヨシノボリです。

 

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オオクチユゴイ Kuhlia rupestris

さすが、某河川。結構たくさん採集できました(笑)
実は、地元の河川で8月にユゴイを採集していたのですが、レア度がわからなくて撮影せずにリリースしてしまったというのはまた別の話。

 

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モクズガニ Eriocheir japonica

なんか片手だけ、もふもふしてますなぁ(笑)
採集したら漁協の人になんか言われるかもなので、水中写真だけ。

 

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オオヒライソガニ? Varuna litterata

先月同様、腹肢の形状を見ていないので何とも言えません。
まぁ、普通のオオヒライソガニってことでいいでしょう(笑)

 

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ケフサイソガニ Hemigrapsus penicillatus

いや、だから課金して温〇水流入河川に来てるんだから温帯性カニなんて、、
とも言い切れないくらいかわいい黒いドット模様。

 

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スジエビ B型 Palaemon paucidens

実はちゃんと撮影したことがなかったスジエビのBタイプ。
Aタイプに比べて模様がくっきりとしててキレイな印象です!
これも温帯性種ですが...(以下略)

 

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ヤマトヌマエビ Caridina multidentata

正直、この大きさのヤマトってなかなか採集できないんですよね。
上流域に行くとどれも成体だし、熱帯性コエビ類採集で混ざるのは同定に苦労するレベルの小ささですからね。

 

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ミゾレヌマエビ C.leucosticta

実はちゃんと撮影してなかったエビランキング第1位かもしれない。
わざわざサンプリングして、持ち帰ってから撮影した僕, えらい!

 

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ヒメヌマエビ C.serratirostris

闇落ちしたアイドル ヒメちゃん♡ と呼びたくなるような体色。
こんなクールなカラーに痺れる、憧れる!!

 

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リュウグウヒメエビ C.laoagensis

これまた闇落ちしたかのように漆黒な体色!!
真っ黒な体に入る1本の黄色の線は非常に美しい(*´▽`*)
個人的にかなり好きな熱帯性ヌマエビ、地味とは言わせないぜ。

 

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コンジンテナガエビ Macrobrachium lar

またまた闇落ちしたような体色シリーズ。
といっても、こいつはまだまだ茶色いので甘いですね。
余談ですが、関東圏の冬に採集した熱帯性コエビ類を陸上で撮影すると、あっという間に冷え切って麻痺するので注意。
ebina は熟練した技術を持ってして撮影しました()

 

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ヒラテテナガエビ M.japonicum

はい。闇落ちシリーズ終了(笑)
正直、典型的すぎてコメントしにくい..。CSPL用に撮影した個体です!

 

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ザラテテナガエビ M.australe

ヤリ状に伸長した額角がかっこいいですねぇ!!
ちなみに体色が白く濁っていますが、寒さによるダメージと思われます。

 

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コツノテナガエビ M.latimanus

2020年の締めに相応しい大物です!!
関東圏で12月(年末)に採集されたのは初かもしれません。

 

 

というような感じで、今年の採集日記はこれにて終了したいと思います。

初心者なりに採集を頑張ってきたつもりですが、満足していただけたのであれば幸いです。2021年も日々の採集に努めていきますので、これからもよろしくお願いします!!

 

ebina-1.hatenablog.com

 

採集日記 2020-11月号

2020年11月号を書いている時期が2021年1月という悲しい状況に陥ってます、Crazy Shrimp管理人の ebina ですぅ!

なぁに書くのさぼってるんね!!と言われそうですが、全くを持って言い返すことができません...

言い訳をするならば、いろいろと採集に入ってたんですよ。。。
ただ、先月号のエビのレベルが高すぎて筆がのらなかったんですorz
▼うわさの先月号▼

そんな文句を言ってたらどんどん写真がたまってって、整理が追い付かず、やる気がなくなってetc...

はぁい!!

四の五の言わずに書いて行きます。。

 

 

まずは、唯一の関東圏外で採集したエビです

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ミゾレヌマエビ Caridina leucosticta

網に入った瞬間から異彩を放ってました。
普通のミゾレでは絶対見られないような黄色で美しい。
個人的な予想なのですが、これは色彩変異なのかもしれません。


ここからは関東圏における採集です

まずは、温〇水流入河川での採集結果です!!

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ボウズハゼ sicyopterus japonicus

心なしか普段の個体よりも透明感があり、採った瞬間にレア種と勘違いしました(笑)
ハゼに詳しい友人に自信満々に写真を見せて、恥をかきました///

 

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ザラテテナガエビ Macrobrachium australe

さすが温排〇流入河川、安定して熱帯性コエビ類が採れます
それはそうとザラテ幼体の額角はぎゅーんと湾曲してかっこいいです!!

 

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トゲナシヌマエビ Caridina typus

この体色のトゲナシヌマエビは初めて見ました。
正直、この色彩が某エビに似すぎていて非常に困りました。

 

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コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus

今月も採集することができました!!
先月号とは異なり、採集直後の色彩を撮影することができたので満足!
1㎝の幼体でも横縞が明瞭でいかにもレア種って感じですね(笑)

 

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オオヒライソガニ類 Varuna sp.

手がふさふさしてないモクズガニが採れたなと思ったらこいつでした。
ただ、普段見るオオヒライソよりはさみが赤くないので別種かもしれないっす。
2021年からは淡水エビだけじゃなく両側回遊性カニ類も勉強して、タイワンオオヒライソガニとの区別ができるようになりたいところです。

 

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ブラックバス類(オオクチバス?)

別に初採集じゃないんですけど、この固体は背骨が曲がった奇形だったので一応撮影しておきました。特定外来だけど色彩はきれいですよねー(棒)

 

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クロホシマンジュウダイ Scatophagus argus

南西諸島では採集したことがありましたが、関東では初採集(^o^)
さすが温〇水流入河川、簡単に10個体以上採集できました(笑)

 

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シマイサキ Rhinchopolates oxyrhynchus

汽水魚の定番って感じですねぇ。。
当時は一緒に写ってるミゾレに気づいてませんでした(笑)
せめて写真だけでも取ってあげればよかったですねー

ここからは、極寒の上流域採集です!!!
ただでさえ水温が低い上流域に寒波が到来している日の真夜中に行くという。。
ちなみに温排〇流入河川は水温20℃越えでしたが
この水域では10℃を下回っていました

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トウヨシノボリ類??  Rhinogobius sp.

初採集なので自信ないですけど、カワヨシノボリにしては胸鰭の鰭条数が多いと思うのでトウヨシノボリ類だと思います。
頬の細かい赤色の斑がすごく新鮮でかっこいいですぅ(≧▽≦)

 

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ヌカエビ Paratya improvisa

実はヌカエビをあまり採集したことがなかったこともあって知らなかったのですが、成体雌はこんな黒っぽい体色になるんですねぇ。
若干青っぽくていい感じです!(地味だけど)

 

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カジカ 大卵型 Cottus pollux

上流域の定番の魚ですよね、たくさん採集できたので食べればよかったな、、
写真の手の映り込みは、まぁ、ご愛敬ってことで。

 

 

 

最後は、寒すぎず、温かくもない小河川で採集してきたのでそれの報告!!

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アオダイショウ

寒すぎたのか、けがをしていたのか、この姿勢で全く動かなかったので陸に移動させておきました。
余計なお世話が嫌だったのか、めちゃめちゃ臭いにおいを網につけてきた曲者

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ヒメヌマエビ Caridina serratirostris

11月なら普通の河川でもぎりぎり採集することができました。
おそらく12月になると死滅するのか、突如として採集できなくなるタイプです

 

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チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis

網に入った瞬間にスジエビではないとわかりました。
図鑑で存在は知っていたものの、近場で採集できるとは思っていなかったので正直焦りました。。。
いくら外来種とは言え、正真正銘の初採集エビです(笑)

 

 

てな感じで、あれだけ書くの渋ってたのがウソみたいにいい感じの採集をしていたことに気づいた ebina でした(笑)
もちろん先月みたく、ほとんどの既知の関東産熱帯性コエビ類を制覇したわけではありませんが、初採集のエビ類・ヨシノボリ類が出せたわけで満足です!!

まぁ、今回みたいな感じでだらだらと採集日記は書き続けていく予定ですので、生き物屋の皆さん、今後ともどうぞよろしくお願いします!!

 

ebina-1.hatenablog.com

トゲナシヌマエビ Caridina typus

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トゲナシヌマエビ Caridina typus

十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>ヌマエビ科>ヒメヌマエビ属

琉球列島から福島県・石川県まで分布しているヌマエビ類の1種。
聞きなれない和名から、多くの人が珍しいエビと思うかもしれないが普通種である。

和名の通り、額角上縁に鋸歯が無いため「トゲナシ」と呼ばれているが、稀に1歯ある個体がいるらしい。
勝手ながら「幻のトゲアリトゲナシヌマエビ」と呼んでいる。(なお、見たことはない)

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額角歯式は 0+0/0-4 と、写真のように額角下縁には歯がある場合もある。
日本に生息するヒメヌマエビ類は、本種を除いてすべての種で上縁歯を有するため、額角を観察することで容易に同定することができる
ただし、西表島固有種のカワリヌマエビ属、イリオモテヌマエビは上縁歯を持たないことがあるので他の形態的特徴も確認した方がよいだろう。 

額角の短さ指節の短さ、なめらかな体のラインから、いかにも上流に適応しているように見えるが、河川全域に生息しており、用水路潮だまりにも出現することがある。

上記の説明だけ読むと、どこでも優占ように感じますが、経験上、関東での個体数は控えめで、限られた水域で優占していることが多い。
加えて、ヒメヌマエビのように12月あたりから急激に個体数が減少する。少なくとも、筆者は温排水の影響を受ける水域を除いて、1月以降に本種を見た記憶がない。

このことに関して、本種が冬の低水温に耐えられずに死滅しているという可能性が高いと感じる一方で、5月頃に体長20㎜超の個体が採集されることもあり、越冬しているようにも感じる。

余談だが、琉球列島ではおびただしい数が優占しており、形態的に類似している他の種との同定を難しくしている要因となっていると感じる。

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色彩の特徴としては、正中線上の縦線に対して「^」模様が入ることが多い
加えて、正中線上に点線が出る個体も少なくない。

また、頭胸甲側面にはリュウグウヒメエビのような雲紋(~のような模様)が出ることがなく、小斑がランダムに出ていることが多いと感じる。

個人的な経験則だが、幼体ほど額角は短く、成体は割と長い傾向がある。
この点を用いて、幼体の額角が比較的長いヤマトヌマエビリュウグウヒメエビとの区別ができることが多いと感じる。

上記で説明した体色、額角長の特徴はあくまでも傾向があるというだけで、すべての個体に共通した特徴ではない。

 

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石垣島で採集された抱卵個体

正中線上の縦線に対して垂直な横帯が入る個体。
基本的に斜めの線が入ることが多いが、この個体のようにリュウグウヒメエビに酷似した色彩を持つ個体もいる。

 

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沖縄島で採集された個体

腹節背面の断続的な模様がわかりやすい個体。
このような模様は、本種に類似した他種ではあまり見られないと感じる。

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沖縄島で採集された個体

あまり見かけることがない青緑色を呈した個体。
上述したように、本種の色彩変異は非常に豊富であるため、一般的な本種の体色が何色なのか今一つわからない。

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関東の用水路で採集された個体

この個体は上述した5月頃に採集された個体である。
数日後に訪れた際には抱卵個体も見られたことから、冬場でも死滅していないのかもしれない。
余談だが、筆者は本種の体色としてこのような褐色の個体がもっとも多いと感じる。

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与那国島で採集された個体

体側に白色や濃い緑色の斑が並んでおり、ミナミオニヌマエビのような雰囲気である。
理由はわからないが、与那国島ではこのような体色の個体が少なくなかった。

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石垣島で採集された抱卵個体

このような濃色は、大型雌で見られることが多い。
ミゾレヌマエビやリュウグウヒメエビオオバヌマエビなどでも同様な体色の変化傾向が見られるため、この変化はヌマエビ類にとって利点があるのかもしれない。

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石垣島で採集された個体

沖縄県には、形態が似ているヌマエビ類が多く生息しているので同定には細心の注意が必要である。この個体のように正中線の模様で同定ができない場合は、額角上縁の鋸歯を確認する必要があるだろう。

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東海地方で採集された幼体

写真だとわかりにくいが、額角がかなり短く、眼の中間くらいである。
体色は薄い緑色で、背側の雰囲気がミナミオニヌマエビに似ていると感じる。

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与那国島で採集された幼体

体長は上の個体より一回り大きいが、幼体としてはかなり額角が長い個体。
このような個体は、形態的に類似しているリュウグウヒメエビ等と誤同定しないように注意したい。

 


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参考文献

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・丸山智朗, 福家悠介, 2018. オオバヌマエビの沖縄島からの初記録. Fauna Ryukyuana, 43: 11-17.
・丸山智朗, 乾直人, 池澤広美, 2018. 温泉水の流入する釜戸下流域(福島県いわき市)における十脚甲殻類の記録. 茨城県自然博物館研究報告(21): 135-142.
・丸山智朗, 2017. 越前・能登佐渡の河川で採集されたコエビ類. Cancer 26. p35-42.

 

ひとりで八重山行ってきた件 路

こんばんわ、ebina でーす🦐

今回は、八重山遠征の番外編記事ということで、路上で出会った数々の生物をアップしていきたいと思います。
なんだかんだで、合計150㎞くらい移動したと思います。(取り立ての免許で)
そんだけ車を走らせてればそりゃいろんな奴に出会うよねってことで、写真枚数がかなり多いです。その点を考慮して、今回は写真と生物名のみとしていますー。
おそらくですが誤同定頻発していると思うので、ご指摘等ありましたらコメントにお願いしますm(__)m

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サキシマヌマガエル Fejervarya sakishimensis

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ヤエヤマカジカガエル Buergeria choui

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ヤエヤマヒメアマガエル Microhyla kuramotoi

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オオハナサキガエル Odorrana supranaria

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オオヒキガエル Rhinella marina

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イワサキセダカヘビ Pareas iwasakii

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サキシママダラ Lycodon rufozonatus

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サキシマハブ Protobothrops elegans

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ヤシガニ Birgus latoro

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ミナミオカガニ Cardisoma carnifex

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オカガニ Tuerkayama hirtipes

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カクレイワガニ Geograpsus grayi

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ヤエヤマヤマガニ Ryukyum yaeyamense

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ベンケイガニ Sesarmops intermedius

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リュウキュウアカテガニ Chiromantes ryukyuanum

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ミナミトビハゼ Periophthalmus argentilineatus

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カマドウマ Diestrammena apicalis

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ナナホシキンカメムシ Calliphata nobilis

 

こんな感じでいろんな生物を見てきた八重山の路上撮影でした。
明らかに路上じゃないのがありますけど...

冒頭でも述べた通り、誤同定が多いと思いますので、コメントでご指摘等していただけると幸いです。
生き物屋の皆さん、今後ともどうぞよろしくお願いします!

▼これまでの記事一覧はこちら▼

ebina-1.hatenablog.com

 

ひとりで八重山行ってきた件 参

 こんにちは、ebina です🦐

前回に引き続き、八重山遠征の報告をしていきます(*´▽`*)
今回はebina の大好きな清流域での採集をピックアップします!

▼前回の記事はこちら▼ 

 

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ツブテナガエビ Macrobrachium gracilirostre

日本のエビとは思えないような色彩のテナガエビ
前回の遠征でも採れましたが、いつ見ても感動します!

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コツノテナガエビ M.latimanus

河川最上流域に生息する強靭なテナガエビですね。
別に個体数が少ないわけじゃないのですが、河川の源流域にいかないと出会えないので滅多に見れない印象ですね(`・ω・´)

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ネッタイテナガエビ M.placidulum

再び登場、八重山の普通種ネッタイテナガエビです(笑)
普通種とは言え、色彩はきれいですよね(^O^)

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ヒラアシテナガエビ M.latidactylus 

清流の直前の下流域で採集した小さなエビ。
額角歯式からしてオオかヒラアシなのですが、頭胸甲側面の模様からしてオオテナガエビっぽいけど、額角の形状からヒラアシテナガエビと同定しました。
これで、新規14種目のテナガエビとなりました!!

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オオバヌマエビ Caridina macrodentata

トゲナシに似てるレアなヌマエビその1という印象です。
頭胸甲が若干短いので、雰囲気同定できると感じました!

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リュウグウヒメエビ C.laoagensis

トゲナシに似てるレアなエビその2って感じです(笑)
オオバよりも見分けるのが難しく感じます( ;∀;)
参考文献とかがあるわけではないのですが、ちょっと前の学会で複数種存在すると示唆されているそうですが、詳しい話はわからないです。
八重山列島産の固体は腹節下部に黒斑が出ると思っていたのですが、この固体は出てないので、黒斑ありのリュウグウとは別種なのかな...?

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ミナミオニヌマエビ Atyoida pilipes

激流に生息するエメラルドのような美しいヌマエビ✨
コツノテナガエビと同様に、個体数はあってもなかなか見れないエビ。

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タメトモハゼ Ophieleotris sp.1
かなりビックなハゼで、見るものを圧倒する極彩色!!
逆光補正で撮影しただけでスーパービューティーですね✨

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シマエソハゼ? 

実は、今採集で一番最初に採集した生物です(笑)
人生で初めて見たので、多分なかなかレアなハゼだと思います!

 

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チュラテナガエビ Macrobrachium sp.

今回も採集できました!!嬉しすぎる(≧▽≦)
しかも、かなり立派なオスも採集できたし、最高ですね!!

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カスリテナガエビ Macrobrachium sp.

今回の遠征の一番の大物!!未記載テナガエビの2種目です!!
網に入ったときは、チュラテナガエビの色彩変異かと思いましたが、額角歯式や頭胸甲側面の模様からこのように同定しました。
さりげなく、日本の未記載テナガエビ2種とネッタイテナガエビ種群3種の採集を達成できて大満足です°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

 

以上を持ちまして、かなりいい感じの成果を残した八重山遠征報告を終了します!
今回の記事は、ebina の作成した記事史上最高の豪華さで、淡水エビ好きの皆さんには楽しんでいただけたと思います (だったらいいな。)

こんな調子で、ゆるーく、ときにはがっつりと淡水エビ採集に努めていきますので、生き物屋の皆さん、淡水エビ好きの皆さん、今後ともどうぞよろしくお願いします!

▼これまでの記事一覧はこちら▼

ebina-1.hatenablog.com

 

 

 

ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense

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ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense
十脚目>抱卵亜目>コエビ下目>テナガエビ科>テナガエビ

南西諸島から福島県福井県まで広く分布しているテナガエビ類。
ヒラテテナガエビと異なり、本州だけでなく八重山でも個体数が多い印象。

体長は最大で100㎜と比較的大型である。

本種はテナガエビと形態的に似ているが、テナガエビよりも生息環境が広く河川下流域から中上流域まで見られることが多い。
テナガエビよりも額角や胸脚指節が太短いことからも、幾分か上流域に適応した形態となっていると考えられる。

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額角歯式は 2-3+7-10/2-4 で、額角は典型的な木の葉型である。
額角先端は触角鱗に達しないことが多いが、未成体では比較的長くなる傾向がある。

頭胸甲側面に3本の斜横線が入るが、未成体では色が鮮明で成長するにつれて薄くなっていくように感じる。
ただ色彩的には不明瞭になるが、くっきりと「m」の模様があらわれる。

 

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関東産 成体の雄
上記で述べたように、頭胸甲側面の「m」模様の色は少し薄い
ただ、テナガエビに比べて太くまっすぐであり明瞭です。

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関東産 成体の雌
上の個体と比べ「m」模様の色彩は鮮明である。
模様だけでテナガエビとの区別ができないときは、額角を確認するとよい。
筆者はあまり使わないが、はさみの剛毛が比較的少ない点でも同定可能である。

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関東産の雌の個体
経験則だが、本種は割と色彩変異が多いように感じる。
基本的に成体雄は一番最初の個体のような色彩であるが、未成体や雌では様々な色が見られる。
透明感のある色彩に、頭胸甲側面の3本の赤い斜横線という特徴のみで同定してザラテテナガエビと誤同定しないように注意したい。

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関東産 未成体の雄
ちゃんとケースに入れて撮影しなかったが、明瞭な黄色の個体もいる。
この固体は頭胸甲側面の模様が見えないため、胸脚指節長から同定した。

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関東産の幼体
体長20~30㎜未満の個体でよくみられるが、鉗脚に橙や黄色の色彩が見られる。
上記にあるように幼体は頭胸甲側面の斜横線が鮮明である。

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関東産の幼体
上の個体と同様に鉗脚に黄色の斑が見られる。
この大きさの個体では額角は細長いため、素直に頭胸甲側面の斜横線の形状で同定するのが良い。

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参考文献一覧

・豊田幸詞, 2019. 日本産 淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑, 緑書房, 東京.
・豊田幸詞, 関慎太郎, 2014. ネイチャーウォッチングガイドブック 日本の淡水性エビ・カニ 日本淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社, 東京. 
・諸喜田茂充, 2019. 淡水産エビ類の生活史-エビの川のぼり- Life History of Freshwater Shrimps. 諸喜田茂充出版記念会, 東京.
・丸山智朗, 乾直人, 池澤広美, 2018. 温泉水の流入する釜戸下流域(福島県いわき市)における十脚甲殻類の記録. 茨城県自然博物館研究報告(21): 135-142.